ハルとタクミの物語
🍊第42回 3つのお題
🎈お題①:「空にひらく小さなドア」
🐾お題②:「雲の上の忘れ物」
⏳お題③:「夜のすきまに落ちた夢」
🌱まえがき
雲の上にも、学校があります。
そこでは今日、大掃除が行われていました。
けれど、その中にひとつだけ、
誰も入ってはいけない部屋があったのです。
これは、ふたりの少年が、
その扉を開けてしまったことから始まる物語です。
📖本文
雲の上は、大掃除で忙しい。
僕たちの雲の学校も、右へならいで、全校生徒を巻き込んで大掃除をしている。
「なぁ、ハル、理科室の隣の部屋も掃除するのかな?」
「え、あそこは立入禁止だよ。」
「でも、大掃除だろ、掃除しなきゃ。」
「そうだね。じゃ、先生に聞いてくる。」
「先生に聞かなくてもいいさ。秘密にするから。」
「そんなことしてもいいの?」
「わからないようにすればいいのさ。」
ハルとタクミは、開かずの扉の前に立った。
鍵が何重にもかかっている。
それを、タクミは器用にこじ開けた。
教室の中は薄暗く、足に何かがぶつかった。
懐中電灯で照らしてみると、
「雲の上の忘れ物」
そう書かれていた。
「ねぇ、ここは忘れ物の保管場所じゃない?」
「ああ、そうかもしれないな。」
教室の奥に、かすかに光る場所があった。
近づいてみると、そこには――
空にひらく、小さなドアがあった。
そのドアに手をかけたとき、ハルがつぶやく。
「僕、怖い。戻れなくなるかもしれない。」
「大丈夫さ。僕らはきっと、ここに戻れる。」
ふたりは、ゆっくりとドアを開けた。
そこにあったのは――
「夜のすきま」。
「ハル、僕はこの夜のすきまに落ちた夢を探しにきたんだよ。」
「え、それはどういうこと?」
「僕らがどうして雲の上にいるか、知っているかい?」
「それは……召されたからだろう?」
「あぁ、そうさ。僕は突然ここへやってきた。
大切な家族を残して。」
タクミは、少しだけ目を伏せた。
「この夜のすきまに落ちた夢が、
僕らと家族をつなぐ、唯一の方法だって――
雲の図書館の本で見つけたんだ。」
「だから、ここにあるって思ったの?」
「ああ。」
タクミは、静かに微笑んだ。
「君も、会いたいだろう?」
ハルは、ゆっくりとうなずいた。
「うん。ずっと会いたかった。」
「これから、夜のすきまの夢を拾いあげるよ。」
「うん。」
ふたりは、そっと手を伸ばした。
夜のすきまに、
小さな光が、ひとつ浮かび上がった。

🌸あとがき
大切な人に、もう一度会いたい。
その気持ちは、どこへ行っても消えることはないのかもしれません。
この物語に出てくる「夜のすきま」は、
そんな想いが、そっと落ちていく場所です。
そして、もしかしたら――
誰かがその想いを、拾い上げてくれているのかもしれません。
読んでくださって、ありがとうございました。
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