最期の「有難う」に込められたもの
少し昔の時代。
姑や小姑がこぞって、お嫁さんをいびる。
今の高齢者の方もやはり、大抵はいびられ、そして自身もまた、息子の嫁をいびってきた……という方は少なくありません。
介護が必要になり、施設に預ける家族。
散々な目に遭ってきたお嫁さんは「死んだら連絡をください」と言い、息子さんは面会にほとんど来ない。
それでも、そのおばあちゃんは、いつもそばに家族の写真を置き、愛おしそうに眺めていました。
とても粋な方で、私が綺麗な髪飾りをつけていたら、
「それ、いいな!」
と、食い気味に反応してくれる一面も。
はっきりした性格で、むしろキツい(笑)。
でも、月日は百代の過客にして…。
永の休みにゆっくりと近づいていくのは、避けられない現実でした。
死ぬ直前。
そのおばあちゃんが、私の手をぎゅっと握り、
「有難う」
そう言ったんです。
たまたま同席していた介護スタッフは、そのおばあちゃんと散々バトルを繰り返してきた人で、こう言いました。
「あかん、ホンマにこの人あかんな……。だって、私にお礼言ってるもん」って呆然と私に言いました。
違う。ちがうよ。
みんながお世話してくれたこと、手間暇かけてくれたこと。
いじめたりせんと、関わってくれたこと。
おばあちゃんは、全部ちゃんと分かっていて、
心から「有難い」って思っていたんだよ。
人は、完璧には生きれません。
誰かを傷つけてしまうこともある。
上手く愛せないこともある。
後悔を抱えたまま、歳を重ねていくこともあります。
それでも。
最期のその瞬間に出た「有難う」には、
きっと、その人の人生全部が詰まっていたのだと思います。
人は、最後まで分からない。
だからこそ私は、
誰かと関わることを、簡単に諦めたくないと思います。
上手く言えなくてもいい。
少し照れくさくても、恥ずかしくてもいい。
伝えられなかった後悔は、きっと長く心に残るから。
だからもし今日、大切な人の顔が浮かんだなら。
「有難う」を、どうか届けてあげてくださいね。
