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生きづらさの正体に名前をつける:「いちばんやさしいアロマンティックやアセクシュアルのこと」読了


「いちばんやさしいアロマンティックやアセクシュアルのこと」三宅大二郎・今徳はる香・神林麻衣・中村健 著

若い頃生きるのがとても辛かった。その理由がジェンダーにあるらしいということを知り、セクシャリティの模索やフェミニズムの勉強をした。

生きづらさの正体は、「女は普通こういうものだ」という、社会のマジョリティーからの無意識な押しつけに、日々直面しているということなのだということを理解した。そして、この「無意識の普通の押し付け」は、ジェンダー(社会的性差)だけでなく、性的志向、障害や難病、国籍、人種といった、あらゆる社会的マイノリティーに共通する問題なのだということも理解するようになった。

ちょうどこの社会が「多様性」を謳いだした頃のこと。社会も自分も、ちょっとずつ、変わっていく。ときには良い方向に、ときには悪い方向に。

個人で社会は変えられない。でもできることはある。大切なのは、ひとりひとりが、様々な立場の様々な視点を「知る」こと。知っていれば、無意識に相手に「一方的な普通」を押し付ける、という暴力を振るわなくて済むかもしれない。知っていれば、困っている誰かのために、何か一つでも小さな行動ができるかもしれない…

最近は、「障害の社会モデル」(障害とは、個人の問題ではなく、それに対応できない社会が引き起こしている問題である、とする考え)が、障害ならず、さまざまな生き辛さを解消するためのヒントになる、と考えている。でもこれは、また別の話として、掘り下げたい。

ということで、恋とか愛とかセックスとか、そんなものに大して比重をかけない生活となった還暦の今、過去のジェンダーモヤモヤに、またなにかしら整理をつけようと、読んだ本。

ざっくり用語解説

・アロマンティック Aromantic:他者に対して恋愛感情を抱かないこと
・アセクシュアル Asexual :他者に対して性愛感情を抱かないこと
・アセクシュアルは、現在は一般的に、LGBTQ(性的志向)の中の一つとして捉えられている。アロマンティックは、厳密にはそこに入らず「恋愛的志向」の一つである。
・日本では恋愛と性愛を分けずに「恋愛」という言葉を使うことが多いため、誤解や混同が多い。また歴史的にも意味上の紆余曲折がある。

ざっくり用語補足

・そもそも「恋愛感情」の定義は人それぞれで、明確に断定できない
・そもそも「性愛感情」の定義も人それぞれで、明確に断定できない
・「感情」と「欲求」とは異なる。性的な惹かれと性欲とは別物
・したがって、アロマンテイックやアセクシュアルの具体的な内容を、画一的に断定することはできない。(=性的・恋愛的志向のグラデーションまたはスペクトラム。)
・本書の目的は、人をラベリングする(決めつける)ことではなく、多様な人々を理解するのを助けることである

(アセクシュアル等の)アイデンティティの構築は、アセクシュアルをはじめとするセクシュアリティが「いない」ことにされる社会で、「いる」ことを伝える意味で重要です。多くの社会は、「他者に恋愛/性愛感情を抱くものである」ことを「普通」と捉え、無意識に押し付けてきます。その対抗策の一つが、言葉を紡ぐことです。・・・(アロマンティック・アセクシュアルについて)知ることは、セクシュアリティの多様性を学ぶだけでなく、社会の価値観を見つめ直すことにもつながります。

本書第1章「はじめて知る方へ」より

本書のざっくり要旨1 当事者かもしれない人へ

・アロマンティック・アセクシャルの人の割合は、人口の1%と言われている。大切なのは割合ではなく、「いる」という事実。
・自認に根拠は必要ない。マジョリティーがいちいち根拠を説明せずに生活しているのと同じ。
・当事者には何も責任はないし、悪いことでもない。生き辛いとしたらそれは「社会の責任」。(=障害の社会モデル。風ひかる注)
・相手との関係性を吟味し、カミングアウトしたい場合は、まず一般的な質問から入って様子を見るのが得策(詳細は本書)。
・相談窓口は少ないがある。また、当事者コミュニティもあるので、良かったら連絡して。
・一般的な結婚出産にとらわれない、いろんな生き方がある。独身はもちろん、当事者同士の法律婚や、パートナーシップ条例を使う等。

本書のざっくり要旨2 知り合いが当事者かもしれない人へ

・当事者は「恋愛・性愛があることが前提」とされる様々なことで苦しんでいるのでそこを意識してみて。具体的には以下。
・不愉快な言葉:「病気では?」「トラウマがあるのでは?」「生物学的におかしい」「好きな人とはしたくなるものだ」「大丈夫治るよ」「冷たい人間だ」「女性/男性として怠けている」「経験すれば変わる」等
・大切な人との関係: 友人以上の気持ちを受け止めることができない。性愛のない関係だとパートナー拒否、家族からの罵倒、等
・学校、仕事、社会で: 恋愛・性愛を大前提とした授業、制度等
・当事者からカミングアウトされたら、とにかくじっくり聞く、質問するなら答えを強要しない、前向きな声掛けをする。(詳細は本書)

まとめ

本書はこの後、当事者の声や、各種調査統計などをまとめている。親しく読みやすい作りであるだけでなく、各章の終わりには、発展学習的な詳しい説明も載っている。アロマンティック・アセクシュアルについて、まず基本事項をきちんと知りたい人への良書。

何より著者が、とても慎重に言葉を使っておられることが、超個人的でセンシティブなテーマの誤解を避けると同時に、当事者への一方的な断定を避け、ひいては社会に多様な生き方を認めていってほしいというメッセージを伝えており、読み終わって、温かい気持ちになった。

最も印象に残ったのは、恋愛ごとが苦痛でしかない自分は変ではないか、とずっと悩んできた当事者たちが、「アセクシュアル」「アロマンティック」という用語を知ることで、とてもホッとした、と言っていること。自分の生き辛さの正体にきちんと名前を付けることは、それの解決に向けての出発点になるし、悩んでいるのは自分だけではないということを知り、大きな救いになる。

当事者たちの多くはまた、異性との婚姻ユニットだけを前提に動いている社会が、もっと多様な共生関係を奨励するような社会になってほしいと考えている。これに私は深く共感する。

ゲイ・レズビアンやトランスジェンダーから20年近く遅れてはいるが、恋愛もセックスもしないドラマや漫画も誕生してきているし、当事者の方々が声を上げることで、社会での認知度が上がってきていると考える。認知度が上がらなければ、社会は変わらない。

首相が変わったし、アメリカのトップもああだから、当面はまた、悪い方向に進むとは思うが。

個人的な振り返り

自分はずっと、「女」という属性のために、社会から見下されているように感じていた。思い余った挙句、女同士なら平等に付き合えるかも?と、新宿2丁目(ゲイ・レズビアン界隈で有名な街)のイベントに足を運んだ。そこで意気投合したのがきっかけとなり、同性の人と10年間、同居生活を送ることになった。

厳密に言うと、セクシュアリティ(性的志向)とジェンダー(社会的性差)とは別物。だから自分は見当違いの行動を起こしたことになる。しかし相方は、その矛盾を含め、私を丸ごと理解した。

その頃はまだ、アセクシュアルという言葉もアロマンティックという言葉もなかった。だから、言語化できなかったが、後になって振り返ると、自分のほうは、この本のいう、当事者だったのではないか、と思い当たる。

別れてしまったが、この10年間は、ジェンダー抑圧を全く感じない、とても明るく生き生きできた時期だった。それはたぶん、同じ生き方を模索する人と、一緒に暮らせたからだと思う。「男はガー、女はガー」という圧力を、二人で協力してスルーする日々。どちらかが無理を強いることもなく、支えあった。お互いに、「人生の伴侶」だと思っていた。

当時の「普通」に苦しむ者同志が、めぐり逢い、得難い時間を持てたのだな、と思う。別れて20年近く経った今、相方との出逢いに悔いはなく、心から感謝している。

この本を読んで、こんな気持ちが、降りてきた。

ジェンダーとセクシュアリティの勉強を始めた↓
AIとお勉強 ジェンダーとセクシュアリティ1|風ひかる

参考までに。kindle版がありました


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