十七回のチラ見|毎週ショートショートnote
駅前にできたばかりの小さな店。
その名前がどうにも気になって、私は足を止めた。
ガラス越しに見える赤いネオンサインには「チラ見バーガー」とある。
ふざけた響きなのに、妙に心を掴む。
中に入ると、メニューはなく、ただ一枚の札が立っていた。
〈気になる相手をチラ見した回数でメニューが決まります〉
思わず笑ってしまった。
隣に座っていた男性を、ほんの一瞬だけ横目で見た。
すると店員が現れて「一回、塩バーガーです」と差し出す。
私の胸はドキリと跳ねた。
驚きに目を瞬かせていると、彼もこちらをチラと見返す。
カウンターにチーズバーガーが並んだ。
それからは視線の応酬だった。
バーガー、ポテト、シェイク。
次々に料理が並んでいくたび、私たちの間の空気は少しずつ温まっていった。
「おかしな店ですね」彼が照れくさそうに言った。
私も「でも美味しい」と答えながら、自分でも気づかぬうちに笑顔になっていた。
会計のとき、レシートには「チラ見十七回」と印字されていた。
店員が穏やかに言う。
「十七回はカップル割です」
その瞬間、私と彼は視線を合わせて、同時に吹き出した。
結局、割引のために連絡先を交換したけれど
――きっとそれだけが理由じゃない、と私は思っている。
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