安心の世界に立てた日
花びらを乗せた手の平に、あなたが優しく手を重ねた。
その手を見つめてから、隣を見上げる。
あなたの穏やかな瞳と視線が重なる。
「大丈夫、ここにいます」
いつもと同じように伝えられる言葉に、安心して力が抜ける。
この人に会うまで、どれだけ力んで生きていたのだろう。
背負えるものは全部背負って、切り捨てることだけは上手くなった。
それでも守ろうとした存在は、私を受け入れてはくれなかった。
産みの親は、私の愛を搾り取って終わった。
くたくたになった私を彼は静かに受け止めた。
何も求めず、何も背負わせず、ただ横にいて優しく微笑む。
「大丈夫、ここにいます」
それだけで、私は“ここにいていい”と思えた。
必死に求めなくても、愛は受け取れるものだった。
必死に与えなくても、愛は生まれるものだった。
それをあなたが教えてくれた。
明日もそこにいて、笑っていて欲しい。
明日も「大丈夫」と言って欲しい。
それだけで、私は安心の世界に立つことができる。
手の中の花びらを見つめる。
「…生まれてくる子どもには、あなたと同じ言葉を伝えるね」
彼は照れたように微笑んだ。
「…はい」
花びらが風に吹かれて、空に舞う。
来年は五分先の花を見に来よう。
……3人で。
お読みいただいて、ありがとうございました。本作はシロクマ文芸部さんの企画に参加しております。
