見出し画像

三月のウサギと三日月

三月は、空にぽっかりと
三日月を描いた。

空の蒼はまだ藍色で、
灰と青を混ぜた色がゆるやかに
溶け合い、夜を告げる。

ウサギは、
空に浮かぶ月を見上げた。

夕陽が落ちた世界で、
反対側の空から光をもらう三日月は、
自分が思うよりも、ずっと
輝いていることを知らない。

月の引力には、誰も逆らえない。

その月明かりを、
ウサギはただ見続ける。

目に映る月が、
自分を見ているのかどうかは分からない。

それでも月は、
ただ静かに夜を灯している。

ウサギは月へ、
少しだけ身体を寄せた。

月明かりの中は、
闇に潜むよりも、
ずっと落ち着く場所だった。

やがて朝が近づく。

三月は、空の月を
やわらかく消していく。

桃色と山吹色が折り重なり、
光の粒が太陽を連れてくる。

ウサギは全身に広がる
あたたかさを感じた。

今日も光の下を飛び跳ねる。

三日月の引力と、
静かに引き合いながら、

この空の下で。


お読みいただいて、ありがとうございました。本作はシロクマ文芸部さんの企画に参加しております。


いいなと思ったら応援しよう!