小さな光の粒
元旦ー
娘と元旦の商店街に行こうかと提案すると、喜んで着替えを始めた。
「半袖?」
「寒いから長袖、肌着も長袖がいいかな」
「半袖?」
繰り返す娘。
「寒いから長袖?」
疑問で返す私。
「え?寒いの?」
なぜか驚く娘。
「そう言ってるんすけどね、分かってもらえませんかね?」
「半袖?」
3回目の問いに私はペンをとると、震える棒人間を描いて見せる。
「今日は寒い」
娘が笑っている。
「半袖?」
「分かった、そんなに半袖が着たいなら着るがよい。
半袖が着たいんでしょう?」
半袖の肌着を渡す。
「ありがとう、ありがとう!はいっ船長!」
「長かったなぁ」
着替えが完了するまでの10分はコントのようだった。
初夏ー
キッチンでお昼ご飯を作っている。
娘はリビングでテレビを見ていたが、思い立ったように立ち上がる。
「ママ!トイレ!
ちょっとこれ持ってて」
手渡されたのは、リモコン。
「行っておいで」
受け取ったリモコンをクッションに放る。
すると、慌てて娘が戻ってきた。
「ママ!
ちょっとこれ持ってて!」
再び手渡されるリモコン。
「分かったよ、行っておいで」
私はキッチンにリモコンを置いた。
「ママ〜ちょっと出ちゃった〜漏れちゃった〜」
リモコンは母の元にあるから、安心だったんだね。
そんなことがふと思い出されるGW。
あのときの寒さも、
あのときの焦りも、
きっともう、思い出せなくなる。
でも、
「半袖?」と繰り返した声と、
「持ってて」と差し出されたリモコンだけは、少しだけ、光って残る。
胸の中に、これからも。
