🌚美肌の湯
コタツの上に置かれた入浴剤の箱の中を、こいつはゴソゴソと漁っている。
俺は、こいつの着ているくたくたのパジャマが目に留まった。
「今日の“温泉の宿”は、
箱根の湯かな」
俺「なぁ、そのパジャマ、
もう寿命じゃないか?」
「え、全然。
むしろ熟成されてる」
俺「パジャマを熟成させるなよ」
「パリッとした綿がさ、
徐々に柔らかくなって、
くたびれて、
テロンとしてからが、
本番なのよ」
俺「テロンとしたら、
買い替えだろ」
「テロン最高。
これしか勝たんのよ」
俺「お前、育てんの好きだよな。
その骨気(コルギ)も、ずっと使ってるな」
「これね、
顔のマッサージに効くんだよ。
頬骨の出っ張りも、引っ込める」
俺「根拠あるの?」
「“頬骨の出っ張りは、コルギによって血管マッサージ効果が得られ、もともと体内の老廃物を流す役割をするリンパの滞りも改善させることができるため、小顔効果やむくみ取り効果がその場で現れるほど目に見えて結果が得られるようになります”」
「って、ネットに書いてある」
俺「お前、美容系に熱いんだな……」
「お年頃だよ。
入浴剤は“美肌の湯”にする?」
俺「買ったパジャマ、
おろしてくるわ」
風呂場からは、コルギ片手に、
しっとり肌を得るこいつの鼻歌が聞こえた。
お読みいただいて、ありがとうございました。本作ははらとけいさんのお題に参加しております。
