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002.氷色の声

「後悔してる・・・・」

母は、専業主婦で、パートしか出ていない。社宅である自宅で生け花教室に部屋を貸したりもしていた。人と関わることは嫌いでは無いが、関係の調整は好きではない感じだったようにも思う。
そんな母は、好きなように生きているが、隣の田んぼは青い。というタイプだった。今もかもしれないけれど。
父は、そんな母を「外で働かせたらよかったのかもしれない。」と言った。

氷色の声

「働かせた方が良かったかの・・・」
そう言って、遠くを見る。
どうしようもない、戻れない過去を思い直していた。

キャパの狭い母は、すぐにパニックになり、感情的になる記憶がある。父は、それ以上に短気だが、母も負けていない。
そんな母を見ていたら、社会で揉まれすぎた私からすると
『社会が迷惑なので、家庭でやってください』なんて思ったりもする。
別の人生を歩んだ方が良かったのかもしれないってことだったが、
あんね、父ちゃん。今生きている人生が一番幸せなんだと思うよ。あのキャパの狭い母ちゃんが、社会に出てみ?余計に家で大暴れするよ」
と笑って答えたが、父は黙っていた。

本当はどう思ったのだろう

今更、言ってもと思ったのだろうけど、母の認知症が始まってから、母の友人などとも関わりだした父だったが、他の人と比べて何か思うことがあったのだろう。父は、知らないが、母は、与えられた中で意外と自由に生きている。ただ「隣の田んぼは、青く見える」人であったので、その天井は、青天井ということになる。
父よ。今のままでよいと思うよ。
そう思った。し、そう伝えた。

この人は一体いくつ後悔しているのだろうか。

眠った父の黙ったままの半開きの口を通して、頭の中を見たくなる。一体毎日、何を思い返して、自分を責めているのだろうか。
戦争を体験し、生きる目的で暮らしてきた子供時代。多くの人が同じ経験をしているとしたら、日本の空は、とてつもなく群青色に感じる。

青々とした田んぼを見ながら、ふと思い出した話。