「代位弁済率はわずか5%」 全保連、消費者機構日本の“二重取り”批判に真っ向反論
保証事務手数料めぐる攻防、第2ラウンドへ
家賃債務保証最大手・全保連株式会社(東証スタンダード上場)が、賃貸借契約の保証委託料に加えて徴収している「保証事務手数料」(延滞時に一日あたり2,700円)の適法性を争う訴訟で、被告・全保連が7月10日付で準備書面2を提出したことが分かった。原告・消費者機構日本(適格消費者団体)が主張する「保証委託料と保証事務手数料は同一性質の“二重取り”」との主張に対し、全保連側は真っ向から反論する内容となっている。
「連帯保証人が消えたわけではない」——市場構造論への反論
原告側は、家賃債務保証業者の登場によって賃借人が実質的に契約締結を強いられる「選択の効かない構造」が生まれていると主張していた。これに対し全保連は、そもそも従来から賃貸借契約では連帯保証人の確保がほぼ必須だったのであり、個人保証人の確保が困難になったことで保証業者がその役割を代替しているに過ぎないと指摘。「保証人を確保できなければ住居確保が困難という社会実体自体は変わっていない」と、市場構造の変化自体を否定する立場を取った。
相談件数「45件」は多いのか少ないのか
原告が「数多くの相談や紛争」の存在を主張していた点についても、全保連は数字を突きつけて反論している。同社が締結した賃貸借保証委託契約の累計件数は424万2,000件。これに対し原告が指摘する相談事例はわずか45件(しかも事実関係が未確認のものを含む)であり、「むしろ極めて少数」と評価すべきだと主張。「『数多くの相談や紛争』という表現は裁判所に対する不当な印象操作」とまで踏み込んだ。
登録取消しのリスクを“ソフトロー”として強調
家賃債務保証業者登録制度についても、原告は「登録=契約内容の適切性審査を意味しない」として制度の限定的な意味合いを主張していたが、全保連はこれに対し、上場企業としての立場を前面に押し出した反論を展開した。
同社によれば、仮に登録規程第11条違反により登録取消しの行政処分を受けた場合、東証の適時開示規則(有価証券上場規程402条4号F)に基づき開示義務が発生し、投資家からの信用失墜につながりかねないという。「登録を受けていること自体が、賃借人の権利利益を侵害しないよう業務を行わせる“ソフトロー”として機能している」との論理構成だ。
核心論点:保証委託料と保証事務手数料は「性質が違う」
訴訟の核心である消費者契約法10条をめぐる攻防では、全保連は「二重取り」との前提そのものを否定した。
同社の主張はこうだ。保証委託料は、賃料等の不払いの有無にかかわらず全賃借人から徴収するもので、これは「被告が連帯保証人となることで賃借人が希望物件に入居できるという便益への対価」。一方、保証事務手数料は代位弁済という個別の事象に対応する費用であり、両者は性質が異なるとする。
さらに全保連は、自社の**代位弁済率が約5%**にとどまることを根拠に、「もし保証委託料だけで代位弁済費用を賄うなら、家賃を期限どおり払っている大多数の誠実な賃借人が、本来負担する必要のない費用を負担させられることになり、むしろ不公平だ」と主張。延滞した賃借人にのみ費用を負担させる現行の仕組みこそ合理的だとの立場を鮮明にした。
一日の延滞で2,700円という手数料水準についても、「代位弁済等の実際の作業コストは2,700円を超えうるものであり、利息のように延滞期間に比例して膨らむ性質のものではない」として、高額との批判は当たらないとした。
消費者契約法9条適用にも「論理矛盾」と反撃
原告が主張する消費者契約法9条1項2号(賃貸人と保証業者を同一視すべきとの構成)についても、全保連は「被告の代位弁済は賃貸借保証委託契約に基づくものであり、賃借人の債務不履行そのものを原因とするものではない」として適用を否定。加えて、原告が別の場面(大阪高裁判例の引用箇所)では「賃貸人と被告は別」という趣旨の主張をしていることを指摘し、「論理矛盾を起こしている」と原告側の主張構成そのものを問題視した。
今後の焦点
準備書面2は、原告が主張してきた「二重取り」「消費者にとって不利益な契約が存続しやすい構造」といった論点のほぼ全てに対して、代位弁済率の低さや契約件数の規模感を数字で示しながら反論する内容となっている。今後、原告・消費者機構日本側がこれにどう再反論するか、そして裁判所が保証委託料と保証事務手数料の「性質の違い」という被告の整理をどう評価するかが、訴訟の帰趨を左右する焦点となりそうだ。
(本記事は、当事者の一方である被告・全保連株式会社が2026年7月10日付で提出した準備書面の内容に基づいて作成したものです。原告側の反論内容や裁判所の判断については、今後の訴訟の推移を注視する必要があります。)
