元検事の取調べをめぐる刑事裁判始まる 違法性の判断が今後の捜査実務に影響する可能性
大阪地検特捜部の元検事による取調べをめぐり、特別公務員暴行陵虐罪に問われた刑事裁判が始まった。取調べの適法性が正面から争われる事案として、検察・警察の取調べの在り方にも影響を与える可能性があるとして注目されている。
この問題の発端となったのは、2019年に大阪地検特捜部が学校法人の土地取引を巡る約21億円の横領事件として、当時の理事長ら6人を逮捕した事件である。
逮捕者の中には、不動産会社プレサンスコーポレーションの創業者である山岸忍氏も含まれていた。
その後の刑事裁判では、山岸氏は一貫して無罪を主張。裁判所は、元部下に対する取調べについて「必要以上に強く責任を感じさせ、真実とは異なる供述をさせかねない」と判断し、その供述の信用性を認めなかった。
最終的に、逮捕された6人のうち山岸氏のみが無罪判決を受けた。
山岸氏はその後、取調べを担当した元検事について、取調べが脅迫的であったとして特別公務員暴行陵虐罪で刑事告発したが、検察は不起訴処分とした。
これに対し、山岸氏側は付審判請求を申し立てた。付審判制度は、公務員による一定の犯罪について、検察が不起訴とした場合でも、裁判所が審理の必要性を判断する制度である。
裁判所はこの請求を認め、元検事は刑事裁判を受けることとなった。検事が付審判によって被告人となる事例は極めて異例とされる。
公判で被告となった元検事は、「取調べの言動に陵虐に当たるような行為や意図は全くなかった」「特別公務員暴行陵虐罪には当たらないと考える」と述べ、起訴内容を否認した。
一方、指定弁護士は、公判後の会見で、「これくらいは許されるという認識のまま刑事捜査が行われてきた可能性がある」「今回の裁判は、こうした取調べが犯罪に当たるかどうかを判断する重要な事件になる」との見解を示した。
弁護側も、「単に怖い取調べだったというだけでは足りず、刑法上違法となる陵虐に該当するかどうかを厳密に判断すべき事案である」と主張している。
傍聴した山岸氏は、公判後、「こうした取調べについて、関係者の間では問題視されていなかったことが明らかになり驚いた」「一般市民との間に認識の隔たりを感じた」とコメントした。
今後の裁判では、実際の取調べの録音・録画データや発言内容などを基に、刑法上の特別公務員暴行陵虐罪に該当するかどうかが審理される見通しである。
今回の裁判は、一人の元検事の責任の有無だけでなく、今後の取調べの適法性や捜査実務の在り方にも影響を与える可能性があることから、その判断が注目される。
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