[ep.64]窓辺とジャムと母の「内緒話」
2020年2月の入院生活のときに書いたブログを、いまの私の気持ちと重ねながら、あらためて書き直しました。
日の出をみる
病室は、思っていたより静かでした。
そして、私は日の出を見るのが習慣になりました。
さすが特別室。素晴らしい景色が見えます。
広すぎるこの部屋に、私はたった一人でした。
病状と向き合うには、この静けさは少し負担に感じられました。
だから、朝が待ち遠しかったのです。
だんだん、山のふちどりが薄紅く染まり
太陽があらわれる……。
暗かった世界が
太陽の到来によってエネルギーを注入され
私にも、届きます。
大丈夫だ
大丈夫だ
私のどこかから、声がする。

窓辺のひかりと友人からの贈り物
窓が広いので、部屋には光があふれています。
お友だちが、ジャム送ってくれたとのことで
家族が持ってきてくれたので
娘にお願いして、窓辺に置いて撮影しました。

彼女の手作りジャムは、ラベルにもイラストにも
彼女らしさが、いっぱいに詰まっています。
そして、
太陽の光とジャムの相性の良さ。
いちごの赤、マーマレードの黄色が透き通って、宝石のようにキラキラひかります。
心にまでひかりが届くようでまぶしい。
ありがたい。
これから、ちょっとずつ、頂こうと思っています。
友人から聞いた、母の言葉
この頃から1年ほどして、ジャムを送ってくれた友人に会う機会がありました。
ジャムのお礼を言った私に、彼女が教えてくれたことは、私の驚きでした。
あの頃ね、
「あなたのお母さんが、私にこう言ったの。」
「あの子が、今大変で。
私はなにもできないから、
○○ちゃん(友人の名)に、力になってほしい。
そして、この話は内緒にして。」
私には、そんなことを言う母は想像できなかった。
私を気づかう言葉なんて、
面と向かって聞いたことがなかったから。
母は、不器用なまま、
私を想ってくれていた。
思えば、あの時窓辺でキラキラと輝いていたジャムには、
友人の優しさだけでなく、母の祈りも詰まっていたのだと思う。
でも、真実を知ったとき、母はもうこの世にはいませんでした。
それでも。
遅れて届いた母の想いは
いまも私の心を、静かにあたためるのです。
