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記録から記憶へ。コンパクトなカメラが教えてくれた、何気ない風景の愛おしさ。

「なぜ自分は、こんなただの看板にシャッターを切ったのだろう。」
プレビュー画面に映る駅名標を見て、自分でも少し驚いてしまいました。以前の僕なら、見向きもしなかったはずの風景。それまで見えていなかった世界が、そこにはありました。


カメラを持ち歩くのが当たり前の日常

ミニマルを極めたフジの傑作カメラ、FUJIFILM X-E4。これに単焦点のXF23mm F2.8 R WRをつけてスナップするのが最近のお気に入りです。

FUJIFILMのカメラを手にしてから、僕の写真に対する距離感は変わってきたように思います。以前までは「今日は写真を撮るぞ」と気合を入れて、重い機材を詰め込んだバックパックを背負って出かけていたことも多かったですが、軽量コンパクトなカメラだと、まるでお気に入りの文房具を持ち歩くような軽やかさをもたらしてくれます。

特にX-E4のフラットでミニマルなデザインにより、右手にすっぽりと収まるサイズ感、軍艦部に並ぶアナログなダイヤル、そしてパンケーキレンズ。このセットなら、近所の散歩でも、仕事帰りの何気ない道でも、自然と持ち運べるような気がします。気合を入れて持ち運ぶ特別な道具だったものが、バッグの中にあることが当たり前の存在へと変化していることを実感しています。

変わらない「好き」を追いかけていた

先日、このセットでいつもより少しだけ遠出をしました。目的地は、以前から気になっていた塩屋という海沿いの街。青い空と海、そして山陽電車の少しレトロな印象のある車両を撮影できるスポットがあると知り、ぜひ行ってみたいと思っていた場所でした。

一人で撮影に出かけるときは、自分なりの定番があります。道端に咲く季節の花々や古びた商店街の様子など、多くの人が美しいと感じるものや、ドラマチックな瞬間を切り取ることが、これまでの写真の楽しみ方の一つでした。

その日は、お目当てのスポットに向かいつつ、いつものようにスナップに興じていました。そして目的地に到着して、SNSで紹介されていた写真を思い出しながら構図を決め、タイミングを見計らってシャッターを切ること数十分。X-E4の小気味よいシャッター音とともに、その瞬間を撮り溜めていく作業。気候も良く、他に撮影者も通行人もいない静かな環境で、十分に満たされた時間でした。

いつもと違う感覚を得た瞬間

撮影を終え、心地よい疲れとともに帰路につこうとした時のこと。ホームで電車を待っていると、ふと線路を挟んだ反対側のホームの景色が目に留まりました。

そこにあったのは、何の変哲もない「駅名標」でした。

この駅は海のすぐそばに位置しており、ホームの向こう側は遮るものが何もなく、吸い込まれるように抜ける青い空と、穏やかに凪いだ海だけが背後に広がっていました。そして、そこにポツンと佇む駅名標が、僕の心を刺激してきました。差し色となった赤が、さらに興味をそそったのかもしれません。

以前の僕なら、きっとここでカメラを取り出すことはなかったと思います。なんなら、駅のホームで電車を待つ時間は、スマホを取り出してSNSを眺めている時間の方が長かったと思います。たとえ目の前に駅名標がポツンと立っていても、「ただの看板じゃないか」と気にしていなかったでしょう。
でも、この時は違いました。吸い寄せられるようにカメラを構え、ホームの手前の角に水平を揃えてシャッターを切っていました。

潮風と波の音に夏を感じながら、自分でも不思議なほど、その何でもない風景に心が動かされていたように思います。

身軽な装備だったから

僕はなぜ、あの駅名標を撮ったのか。後で振り返ってみて気づいたのは、やはりその日の身軽な装備が効いていたのだと思います。

一般的に人の視野に近いと言われる35mmの焦点距離だったのも、良かったのかもしれません。望遠レンズのように特定の被写体をグッと引き寄せるような装備だったら、駅名標をそのように撮ろうとは思わないでしょうし、かといって超広角レンズで駅のホームを撮ろうとは思わなかったでしょう。

今、目の前に広がる様子をそのままの距離感で切り取ることができる画角だったからこそ、そのとき僕の目に映っていた駅名標とその背景である海と空、そしてそこにある静寂を含めたその場の情景そのものを写真に収めることができたように思います。

撮るものが変われば、世界が変わる

今までにない感覚を得たことで、今後、僕の撮るものは変わってくるかもしれません。以前の自分なら「映えない」と切り捨てていたかもしれない風景たちが、愛おしく価値のあるものに感じられるようになるかもしれません。それはFUJIFILMの軽快なカメラセットが、僕のアンテナの感度を少し敏感にしてくれたからのように思います。

撮るものが変わるということは、すなわち、目の前の風景の捉え方が変わるということにもなります。特別なイベントでなくとも、有名な観光地に行かなくても、撮るべき理由を見つけられるようになると嬉しいです。

この日のように軽快な装備を駆使して、何気ない日常と風景にもっと目を向けていきたいと思います。ふとした瞬間を記録するだけでなく、大切な記憶にできるように。

皆さんの「日常を切り取る相棒」は何でしょうか?

それでは。


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