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シロクマ文芸部|お遊び企画「花びらを」

花びらを送るよ・・・とだけ書いてある封からいきなり舞い落ちた花びら。
少し茶色くなって、とてもきれいとは言えない花びら。
それは、遠距離でなかなか逢えない彼からの手紙だった。

こっちではすっかり散ってしまった桜だが、どうやら彼のところでは花吹雪でも舞っている頃だろうか。

桜好きの私への彼からのプレゼント。

わかっているの
どんなに茶色く色褪せてもきっと私は喜ぶであろうと信じて、吹き溜まりのなか少しでもきれいな花びらをと両手ですくっている彼のイタズラっぽい笑顔が。

花のことなどちっとも興味のない彼だけれど、毎春の桜だけは咲きかけから散り際まで何度も付き合ってくれたっけ。

まだ咲きそろわない花を見ながら彼のポケットに手を突っ込んで歩いた夜桜。見事に咲き誇っている花のトンネルを手を繋いで歩いた土手。一つの傘で濡れながらこの雨で花は散らないか?と心配しながら歩いたことも。風に吹かれて無尽蔵に散る桜がお堀の中に吸い込まれるところも見たよね。花の形のまま落ちているのをみて泣き出した私をそっと抱きしめてくれたわ。


・・・あれから半世紀もとっくに過ぎ
今ではほとんど忘れかけている彼だけれども、あの茶色くなりつつある花びらの色とそれらがドサっと封から落ちた様子は、決して忘れることのできないシーンとなった。


#シロクマ文芸部


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