なぜ"他人軸"でしか生きられないのか?
”他人軸で生きるのをやめて、自分軸で生きよう”
よく耳にするし、たしかにその通りだと思う。
でも、それが簡単にできたら、あんなに苦しまなかった。
自分の過去を振り返って、自己分析もたくさんやった。
価値観マップも描いたし、モーニングノートも書いた。
自己啓発書は読み漁ったし、実践もした。
目標を立てて、行動を習慣化して、瞑想とかヨガにも手を出した。
当然、一人旅もしたしバイトやサークル、国際交流にも参加した。
シェアハウスに住んでみたりもした。
それなりに刺激はあったし、気づきもあった。
でも、根本は何も変わらなかった。
むしろ、努力すればするほど"やっぱり自分は変われないんだ"という絶望が強まった。
全部がうまくいかなくなって、僕は休職した。
何もできなくなって、何をしていいかもわからなくなった。
苦しい思いをするために、あんなに苦しい努力をしてきたのか?
どうしようもなくなったとき、僕は本当の意味で自分と向き合った。
もう失うものなんてなかったから、今まで無意識に目を背けてきた過去とちゃんと向き合うことができた。
なぜ「他人軸」でしか生きられないのか
ひとつずつ、パンドラの箱を開けていった。
心の奥に閉ざしていたものが、ようやく見えてきた。
僕の中には、無意識の”ルール”ができあがっていた。生き延びるために幼少期に身に付けた、この世界のルールだった。
・自分の気持ちや意見は無価値。言っても無駄。
・言われた通りにするしかない。
・自分の意見は持たないほうがいい。対立のリスクになるだけ。
このルールが自分をずっと縛りつけ、苦しめてきた。
でも、なぜこんなものができてしまったのか。
その答えも、やっぱり過去にあった。
”自分の気持ちは無価値だ”と確信した出来事を思い出すことができた。
小学生の頃、ピアノの習い事をしていた。
小学1年生から中学2年生まで、ずっと続けていた。でも、本当はいやでいやでたまらなかった。
低学年のころ何度も母に「やめたい」と言ったが聞き入れてもらえなかった。
「男の子でピアノ弾けたらかっこいいよ」とか、
「上手だね」みたいなこと言って、うまくかわされていた。
でも、ある日、何時間も泣きながら訴えた僕に対して、母は強く抱きしめながらこう言った。
「おばあちゃんにピアノを聴かせてあげたいでしょ?」
そのとき、幼いながらに悟った。
ああ、何を言っても無駄なんだな。
僕の気持ちって、意味ないんだな。
“優しい子ども”でいないとダメなんだな。
その日から、気持ちを伝えるのをやめた。
学校でその日あったことなんてろくに聞いてくれない。
人の話はちゃんと聞きなさいと自分は言うのに。
ピアノの話は象徴的な出来事だったが、他にも同じようなことは何度もあった。
いつの間にか、僕は"言われた通りにする子"になっていた。
それが、僕にとって”この世界”の最善の生存戦略だった。
母の子育ては、すごく熱心だった。でも狂気とさえ思えた。
”毒親のせいでこうなった”って言いたくなることもあったし、実際そう思っていたこともある。
でも、ただ恨んでも自分は何も変わらなかった。
だから次は、母のことを考えた。
“なぜ母はあんなふうに育てたんだろう”
母は、自分の幼少期がどれだけつらかったか、よく話していた。
人の話はちゃんと聞きなさいと教育されていた僕は何度も何度も真面目に聞いていた。
母が幼い頃に祖父と祖母は離婚した。
祖母と一緒に暮らしたかったが、金銭的な理由で祖父に引き取られた。
祖父には恋人ができ、居心地が悪かったそうだ。
しばらくして祖母がなんとかお金を工面し引き取ってくれた。
けれど、シングルマザーが収入を得ることは難しく、貧乏な暮らしだった。
親戚の家に住んでいたが、邪魔者扱いを受けて家を出た。
行くあてがなく、線路の上を歩いたこともあったそうだ。
なんとか住み込みの仕事も見つけるも生活は苦しかった。
だから母は、「絶対に幸せな家庭をつくる」という執念を持っていた。
“自分がしてほしかったこと”を僕に全部してくれた一方で”自分がしたかったこと”を僕に全部やらせた。
母が思い描く”理想の家族”
理想の家族のピースとして”従順で優秀な子ども”という役割を僕は求められていた。ただの子どもだった僕に、それを跳ね返す力はなかった。
母にも事情があった。僕にも事情があった。
誰が悪いというものじゃない。
ただ”仕方がなかった”
何も知らない他人が言ってくる
”誰かを恨んだってしょうがない”
”過去を悔やんでも意味がない”
なんて薄っぺらい言葉じゃない
何度も行動して、悩み苦しんで、どうしようもなくなって、過去のトラウマと向き合い、自分が心の底から納得した上での”仕方がなかった”
そう思えたとき、やっと今までの苦しみに諦めがついた。
そして、初めてこう思えた。
”これからどうしよう"
このとき僕はようやく、自分の足で歩き始めることができた。
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