見出し画像

パフェがなくなっただけなのに⑯~思いやりの話~

彼女とデートしたときの話だ。

デニーズで注文したあと、
ぼくがトイレに立ち、
席に戻ると、
彼女は、ニコニコして、座っている。

気が付くと、テーブルには、
おしぼりが二人分、
置いてある。

ぼくは、
トイレから席に戻る途中、
ドリンクバーに寄って、
おしぼりを二人分、
手に持っていた。

「ありがとう。
 同じことしちゃったね。」
「うん。ウフフ。」

パフェが運ばれて来る。
「わあ!美味しそう!」
彼女はうれしそうだ。
ぼくもうれしくなる。
ぼくは、彼女が喜ぶ姿が
大好きなのだ。

ぼくは、何も言わずに、
カトラリーから
スプーンやフォークを渡す。

「ありがと。」
「ね。美味しそう。でも、歯にしみそう。
 もっさん、知覚過敏なんだ。」
「うん、知ってる。アハハ。」

帰るとき、
彼女は必ず、こう言ってくれる。

「もっさん、忘れ物ない?」

彼女は、
気が利く優しいコなんだなあ、
とぼくは思っていたけれど、
これには理由があることに、
最近気が付いた。

実は以前、こんなことがあった。

ぼくが帽子を喫茶店に忘れてしまい、
そのことを後から、
彼女に伝えた。

「喫茶店を出て、
 駅の改札を通過してから、
 帽子がないことに気が付いて、
 慌ててお店に戻ったんだ。
 座っていた席の下に、
 もっさんの帽子が落ちてたよ(笑)。」と。

すると彼女は、
「帽子被ってお店に入ったのに、
 被らないまま
 もっさん帰るから、
 おかしいなあと思ったんだ。」と笑っていた。

この会話を、
彼女が覚えていてくれて、
「もっさん、忘れ物ない?」と
帰り際に聞くことが
習慣になったことを。

きっと
「また忘れ物を取りに戻ることになったら、
 大変だからね」という優しさが、
そのひと言に入っているんだろう。

お互いが
お互いを
自然に思いやっていることに、
ぼくの中の野沢雅子が、
「尊い。いや、てえてえ!」と、感激していた。
「来週もぜってえ、観てくれよなっ!
 ……いや、デートは月に一回だ。
 来月もぜってえ、お茶に行こうなっ!」

いいなと思ったら応援しよう!