連載|プロなら知っておくべき伝統デザインの型と知識・その4「伝統デザインのタブー」
第4回 伝統の常識——
花札を晴れ着の図柄に使ってはいけない理由
図柄のタブー / 着物の常識 / 吉祥文様
プロが知っていなければならない、図柄のタブーのお話です。美しい花鳥風月を描いた花札。
しかしその図柄を晴れ着に用いることは、長い歴史の中で明確に避けられてきました。
なぜなのか
その理由を知ることが、プロとしての最低限の常識です。

同じカード遊具でも、扱いはまったく異なる
着物の図柄として 可・・・百人一首かるた
文学文様として帯や着物の柄に好んで用いられてきた。知的・高貴・優雅なイメージ。
晴れ着の図柄として 否・・・花札
江戸〜昭和初期にわたり、晴れ着・祝い着のデザインモチーフとして用いられなかった。
花札が背負う、血なまぐさい歴史
今でこそ花鳥風月を表した美しい和柄の遊具カードと認識する人が増えましたが、花札にはもともと別の顔があります。
花札と博打の歴史
江戸初期、幕府が賭博禁止令を繰り返し発令しました。
サイコロを使った丁半博打、数字の書かれた札によるカルタ博打が横行したのです。
禁令の中、数字を描かず、花鳥の絵柄を用いることで幕府の目をくらます手段として「花札」が考案されました。
以降、主に博打場(バクチ場)で使われ、裏社会の資金調達の道具として長く機能した。その血なまぐさい歴史が染みついているのです。
晴れ着の図柄が担う本来の役割
伝統的な晴れ着の図柄とは、幸福や良縁、繁栄や無病息災を願う吉祥文様が基本です。百人一首や源氏物語などの古典文学文様も、知的・高貴・優雅なイメージから長く愛されてきました。
伝統文様には必ず時代背景と意味謂れがあります。
着物が伝統的な衣装である限り、それを無視することはできません。
花札はそれら吉祥文様の対極に位置するものなのです。
図柄のタブー
花札は、粋なお兄さんの羽裏や付け下げなどには有り得るモチーフです。
しかし
間違っても、成人を祝う晴れ着・祝い着に用いてはいけない図柄です。
無知が許されない立場がある
着る人の無知は許されます。
しかし、作る側・売る側・着付けをする側の無知は、許されません。
今回、一例として「花札」を取り上げましたが、伝統デザインにはタブーがいくつかあります。
それを知らないで、お客様に恥をかかせたり、後に大きな後悔をさせてしまうことがあるのです。
プロの無知は罪です。
このような常識とも言えるしきたりを知らない人が増えたのは、学ぶ機会がないことと、教える人が減ったことにあります。
伝統を扱うプロである以上、こうした知識を身につけることは責務です。
着物に関わる人が知っておくべき伝統デザインの常識を学んでいただける機会を設けました。
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伝統デザイン研究家
成願義夫
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