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信じる心が消える前に


俺はサンタクロース。
子どもたちに夢と希望を届ける仕事をしている。

そう、みんなが知っているあのサンタさん。
実は俺なんだ。

まあ、他にもいるんだけど。
サンタはエリアによって担当者が決まっているのさ。


サンタといえば、どんなイメージがあるだろう。

赤い服を着ている?
ヒゲを生やしている?
トナカイに乗っている?

うんうん、よく言われる。だいたい正解。
プレゼントを配っている姿、もしかして見られているのかな?

赤い服は合っているんだけど、あれ実はクサいんだ。なんたって、洗濯しちゃいけないんだよね。きちんとした正装だから、持ち帰っちゃいけないらしい。だから、毎年前年までの自分のニオイをまとって仕事をしているんだ。年々熟成されて、とんでもないことになっている。

ちなみに、俺のヒゲはつけヒゲなんだ。実は意外とまだ若いんだぜ。

トナカイはクリスマスに働きすぎて、その後数ヶ月はお休み期間に入るんだ。それくらいプレゼントを持ったサンタは重いってこと。いや、俺が重いんじゃなくて、プレゼントが重いんだよ?


まあそんな話はどうでもいい。
今年もクリスマスの時期がやってきた。子どもたちは、靴下を用意してプレゼントを楽しみに待っている。

子どもたちにプレゼントを配るときに大変なことって、何かわかるかい?


……そう、早起きなんだ。


え? サンタだって早起きくらい苦手さ。人間だもの。


子どもたちにプレゼントを渡すのは、深夜から早朝にかけて。つまり、子どもたちが寝静まっている時間帯を狙わなければいけない。

深夜から動けるように、夕方くらいから仮眠をとるサンタも多い。俺も例年はそうしている。

でも、今年は寝るタイミングを失って、「今から寝たらもう寝坊する」という時間になったから、いっそ起きていることにした。みんなもこんな経験あるでしょ。

だから、目がギンギンにキマっている。もはやテンションがハイで眠くない。


そんなことを言っていたら、今年のミーティングが始まった。各エリアの担当サンタが一堂に会して、長老サンタの話を聞く。このミーティングで、プレゼントの贈り先が発表される。毎年、急ぎ足でまわらないと最後までいけないくらい、大忙しなんだ。


大忙しなはず──なんだけど。


少ない。


え? なんで今年はこんなに少ないの?


「緊急事態だ」と長老サンタは言う。

「子どもたちの願いが弱くなっている。サンタクロースのことを信じない子どもが増えているのだ。おかげで、今年は靴下を用意していない家庭ばかりなんだ」


俺らのミーティング室は北の果て、雪原の奥にあるんだけど、その隣に「願いの灯台」というものがある。この灯台には、毎年子どもたちの願いが集まってくるから、まぶしいくらいにキラキラ輝いている。ところが、今年はどうか。光が弱い。これは、紛れもなく子どもたちの願いが弱くなっている証拠だ。


「このままではクリスマスが悲しいイベントになってしまう。どうか、みんなの力を貸してほしい」

いつも自信に満ち溢れている長老サンタの声は、心なしか震えていた。


思えば、俺がサンタをしたくなったのも、子どものころの経験があったからだ。靴下にサンタさんへの手紙を書いておいて、朝起きたらプレゼントが入っていた。それが本当に嬉しかったんだ。それからも、お願いすると必ずプレゼントが届けられた。

子どものころの俺みたいに待っている子どもはいる。やるしかない。俺たちが希望を届けるしかないんだ。


「よし、行くぞ!」

俺はそう言うと、大きな袋を背負って小さなそりにまたがりながら、夜空へ飛んだ。冷たい風に襲われながら、胸の中は熱くなっていた。



「ぼく、サンタさんがいるって信じています。でも、みんなはサンタさんなんかいないって言います。サンタさんはいますよね?」

まずは、10歳の男の子。

……やっぱり、サンタの存在を信じなくなっている子どもは多いんだな。そんな中で、信じてくれているこの男の子。不安だよな。自分が信じているもののことを、周りに否定されるのって。

布団をぎゅっとつかみながら眠る男の子の隣に準備された靴下の中に、そっとプレゼントを入れる。メッセージも添えて。

よし、次。


「あたしには夢があります。でも、ままもぱぱも反対するんです。できっこないって。もう誰も信じられなくなっています。助けてください」

お次は、7歳の女の子。

やりたいことがあるって素敵なことなのに、ご両親に反対されているのか。一番信頼している人に反対されたら、何を信じていいかわからなくなるよな。やってみないと、できるかできないかなんてわからない。俺だって、サンタができるとは思っていなかったけど、やってみたら意外とできた。早起きが苦手でも。

目元に心なしか涙を浮かべているように見える女の子の枕元に準備された靴下の中に、メッセージとプレゼントを入れた。


その後も、対象の家の子どもにプレゼントを届け続けた。



……配り終えた。
いつもより数は少ないはずなのに、いつも以上のエネルギーを使った気がする。寝なかったおかげで、ハイテンションで配り続けられたのかもしれない。

ミーティング室に帰ると、配り終えたサンタたちが疲れた様子で休憩していた。疲れた顔の中に、満足そうな様子がうかがえる。みんな気持ちは同じだったのだろう。


 * *


後日、子どもたちからお礼の手紙が届いた。


「サンタさん、ありがとう! みんながサンタさんを信じてくれないからぼくも信じられなくなりそうだったけど、信じてよかったよ! みんなにも自慢しちゃうんだから」


「あたし、サンタさんに助けられた。人を信じていいんだって、夢を追い続けていいんだって思えた。ほんとにありがとう! 来年も待ってるね」


気持ちがちゃんと届いた。

確かに、サンタの存在を信じる子どもは減ったかもしれない。だけど、信じてくれる子が一人でもいる限り、俺たちはプレゼントを届け続ける。その子たちがサンタを信じてよかったと思えるように。


サンタは、いる。


サンタは、いるんだよ。





自分の企画ですが、こちらの企画の【[C]私はサンタクロース 】で執筆しました🌟

昨日の夜中まで0文字だったのですが、スイッチが入って深夜テンションで一気に書いたものになります笑
あえて大きな修正を加えずに、そのテンション感のまま公開させていただきます!


皆さまにも素敵なクリスマスが訪れますように…🎄


#Sakaの教室のみんなでつくるクリスマスツリー


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