ダンバー数が教えてくれるSNSの数問題
イギリスの人類学者ロビン・ダンバーが提唱した「ダンバー数」という概念があります。これは、人間の脳のサイズから認知的な限界を予測したもので、人が安定して関係を維持できる人数は約150人であるとされています。しかし、インターネットやSNSが生活の基盤となった現代において、私たちはこの数字をどのように捉え直すべきなのでしょうか。あえて150人という上限ではなく、最も親密な関係を示す最小単位の「5人」という数字に焦点を当てることで、現代社会におけるコミュニケーションの課題と解決策が見えてきます。
SNSが全盛となった時代、多くの人々は何千、何万というフォロワー数を獲得することに躍起になり、その数を社会的価値と同一視する傾向がありました。しかし、人間の認知能力というハードウェアが変わっていない以上、魂が触れ合うような深い対話ができる相手は、いつの時代も片手の指の数ほどしかいません。私たちはマスメディアのように不特定多数へ情報を拡散することに夢中になるあまり、本来、日常生活の延長線上にあるはずの、少人数との濃密な関係性を犠牲にしてきたのではないでしょうか。
量より質へと価値観を転換するためには、まず「ウケ狙い」をやめることが重要です。多くの人に好かれようとして自分を大きく見せたり、他人が好みそうな仮面を被ったりするのではなく、自分の本当の言葉や本音を旗印として掲げるのです。そうすることで、万人に好かれることはなくなりますが、その発信に心から共鳴した人だけが周囲に残ることになります。ノイズが削ぎ落とされ、価値観を共有できる信頼すべき相手だけが自然と集まる状態こそが、健全な「5人」のコミュニティの始まりと言えるでしょう。
しかし、こうして形成された少人数のコミュニティは、単なる馴れ合いの場であってはなりません。そこには適度な「緊張感」が必要です。強制力のない自由な集まりである以上、魅力がなくなれば人は離れていきます。関係を維持するためには、それぞれが日々新しい情報を取り入れたり、何かに挑戦したりして、互いに刺激を与え続ける必要があります。そして、もし方向性が合わなくなれば、無理に関係を固定するのではなく、メンバーが入れ替わることも許容すべきです。一定期間が経てば半分の人が入れ替わっている、それくらい新陳代謝が良い状態こそが、自然で健全な人間関係のあり方なのです。
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