いい父親だったか?「ザ・コンサルタント」
「ザ・コンサルタント(The Accountant)」(2017年 アメリカ 131分)
監督:ギャビン・オコナー
出演:ベン・アフレック、アナ・ケンドリック、J・K・シモンズ
イランアメリカ大使館占拠事件で、人質のイランのアメリカ大使を救い出すために奮闘したCIA工作員を演じたベンアフレック(アルゴ 2012年)
ジャズドラマーを育成するためには手段を択ばない鬼の音大教授を演じたJ・K・シモンズ(セッション 2014年)
二人のアカデミー賞常連俳優が豪華共演するこの映画は、なかなかの見ごたえでした。
あらすじ
田舎町のしがない会計士クリスチャン・ウルフには、世界中の危険人物の裏帳簿を仕切り、年収10億円を稼ぎ出す命中率100%のスナイパーというもう一つの顔があった。
そんなウルフにある日、大企業からの財務調査の依頼が舞い込んだ。ウルフは重大な不正を見つけるが、その依頼はなぜか一方的に打ち切られ、その日からウルフは何者かに命を狙われるようになる。
表稼業と裏稼業
主人公のクリスチャンウルフは、平常時は会計士としてシカゴ近郊の田舎町で会計相談をして生計を立てています。
表向きはしがない会計事務所のマネージャーで田舎町なので大きな会計案件もありません。
そんな彼の裏の顔は、裏社会の重要人物の会計処理を行う凄腕会計士で、裏工作が見つかりそうになると関係者を次々と暗殺するプロの殺し屋です。
今までになかった人物設定が特異性を強調しています。
さらに、幼少のころからの自閉症ということもあり、コミュニケーションが取りづらいながらも、自閉症などの知的障害者は、ピアノや計算など特別な能力に特筆した才能があるサバン症候群の系統もあり、複雑な設定が重なって現在の仕事を行っているというのも今までなく新鮮でした。
自分も、表稼業の会社員と裏稼業のライターということで、この辺は親近感がわいてしまいました。
まあ、規模が全然違うのは分かっていますよ。
ベン・アフレックとJ・K・シモンズ
ベン・アフレック演じる会計士ウルフとJ・K・シモンズ演じる財務局の局長レイモンド・キングは長年、助手の女性を通じて対話をします。
そうなるきっかけとなった事件のシーンでウルフは若き日のキングを見逃します。その際にウルフが聞いた質問が、
「いい父親だったのか?」
でした。
自分には二人の子供がいる、と命乞いをするキングに聞いた質問です。
ウルフも尊敬する父親を自閉症特有の性格から来る自分のミスで殺されてしまうという痛ましい事件を経験しています。
二人の共演シーンはわずか十数分です。
しかし、そのシーンは非常に印象に残るものでウルフのおかげで、しがない成果しなかった自分が局長にまで出世ができた、と回想シーンでは話します。世の中はきれいごとだけでは済まされないということを二人の名演技で語る贅沢な時間でした。

ウルフに指示を出す女性の正体
これもなかなかでした。
あまり詳しく書いてしまうとネタバレになってしまいますが、ウルフとキング双方に電話をして、彼らの橋渡しと必要な情報をハッキング技術を駆使して提供する人物です。
映画の中では電話でしか登場しません。
しかし、映画の最後に、「え?その人だったの」と驚きを隠せませんでした。

悪党の正体
ウルフも不正会計を手伝う悪党ではあるのですが、映画の舞台となった義足や義手を作っている家電メーカーの不正経理を手伝うマフィアの正体も「え?この人だったの」でした。
作中では経理責任者にインスリンの過剰投与の事故を装って、「手荒いことはしたくないから、自分で決めてほしい」と自殺をさせるなどウルフにも負けない非情っぷりを見せています。

二人のヒロイン
不正会計の舞台となった家電メーカの経理担当として働くデイナ(アナ・ケンドリックス)と、キング局長に呼ばれて、過去の犯罪歴を隠して財務局で働くことがばれ、彼の後任を半ば強制されるメリーベス(シンシア・アダイ・ロビンソン)がヒロインとなります。
デイナはウルフの会計の事務能力に感心しますが、彼のよき理解者となります。

一方でメリーベスは、犯罪歴がある過去はあるものの有能で、ウルフの正体を突き止め、徐々に追い込んでいきます。その手腕をキングも見込み、過去をばらされたくなければ協力しろ、と半ば強制的ではありますが彼女を巻き込み後継者としての地位を提供します。

光と影 それぞれの社会のルール
様々な人間模様が交錯する中、裏社会の重要人物の会計処理を手伝うことで生計を立てるウルフと、裏社会でも不義理を働いた人物を財務局に差し出すことでキングは局長にまで出世し、不正を暴いてきた。
キングは記者会見の際に、不正会計を摘発した際に「チームの貢献」を強調していたが、チームというのはウルフも含めたものであったことに違いないでしょう。
普段は決して通じてはならない人物同士が共通の悪に向かって立ち向かう姿は、世の中の複雑さを物語っています。
しかし、そのルーツはウルフがキングを助けたというところから始まっています。
表社会にも裏社会にもそれぞれルールがあり、それを守っている限りは安全だ、という言葉が非常に印象的でした。
コミュニケーションが取れないだけですごい能力持っているのかもしれない
最近、知的障碍者の絵画が独特のタッチで描かれており、とても注目されているというニュースを見たりします。
この映画の中でも、「健常者は彼らとのコミュニケーションを知らないだけなのかもしれません」と障碍者施設の責任者が語るシーンがあります。
このnoteのトップページの背景もジミー大西画伯の絵を写真に収めたものです。
やはり、障碍者というだけで差別するのはこういった観点からもよくないだけでなく、むしろ損失なのかもしれません。
この映画はそれをよく訴えています。
最後に一言
あまり書くとネタバレ感がすごくなってしまうので、あまり多くを語れない映画です。
そんなことを言うと、映画レビューの程度が知れてしまいますが、久々に「完璧だ!」と思う映画でした。
