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【偏愛本棚#0016】『恋は雨上がりのように』眉月 じゅん

お正月ムードがまだ残るなか、特にやることもなく、毎年なんとなく箱根駅伝を見ている。
応援している大学があるわけでも、順位に詳しいわけでもない。
ただ、テレビの向こうで走り続ける学生たちを、ぼんやり眺めている。

走っている姿そのものというより、
「走ることが当たり前だった時間」を過ごしていた誰かのことを思い出す。
そこから、ふと頭に浮かんだ漫画があった。




今日この本を選んだ理由

何度か書いてきた通り、私は起承転結がはっきりしている本を読むのに、少し気合がいる。
完成度が高い物語ほど、こちらも集中して向き合わなければいけない気がして、
読むタイミングや気力を選んでしまう。

恋愛漫画も同じで、決して嫌いではない。
けれど、連載中の作品だと展開に一喜一憂してしまったり、
大人の視点で余計なことを考えてしまったりして、
物語そのものに集中できないことが多い。

その点、**恋は雨上がりのように**は、すでに完結している。
結末を知ったうえで読める安心感があり、
王道の恋愛漫画のような激しい感情の起伏もない。

駅伝はあくまできっかけで、テーマではない。
走る学生たちを見て思い出したのは、
走れなくなったあとを描く、この物語だった。

新年の、まだ生活のエンジンがかかりきっていない時期。
何かを始めなきゃと焦る気持ちから少し距離を置きたくて、
この本を選んだ。


出会ったタイミング

購入したのは2016年10月。
話題作だったけれど、年の差恋愛という言葉に少し身構えて、
読むのを後回しにしていた記憶がある。

実際に読んでみると、恋そのものよりも、
立ち止まってしまった時間や、言葉にできない感情の描写が強く残った。
読み終えてからも、雨の日や、気持ちに余裕がない日に、
ふと思い出すことが多い一冊になった。


あらすじ

橘あきら。17歳。高校2年生。
感情表現が少なく、どこかクールな彼女が胸に秘めているのは、片想い。

その相手は、バイト先のファミレス店長。
ちょっと寝ぐせがついていて、
たまにチャックが開いていて、
後頭部には10円ハゲのある、冴えないおじさん。

青春の途中で足を止めた少女と、
人生の折り返し地点に差しかかった大人。
派手ではないけれど、静かに心に残る恋のものがたり。


偏愛ポイント

走れなくなった時間が否定されないところ
陸上を続けられなくなったあきらの空白は、
無理に前向きな意味づけをされない。
止まっている時間も、ちゃんと人生の一部として描かれている。

冴えない大人が、きちんと大人として描かれているところ
格好よさや頼もしさではなく、
言葉や態度の誠実さが少しずつ積み重なっていく。

感情の起伏が穏やかなところ
盛り上がりや結論を急がず、
距離感や沈黙を大切にしているのが、この作品らしい。


こんな時に読みたい

・お正月、時間だけがゆっくり流れている日
・何かを始める気分になれないとき
・恋愛漫画に刺激を求めていないとき
・静かにページをめくりたい午後


電子書籍メモ

電子書籍あり。
全10巻と巻数も多くないので、漫画から入るのも十分おすすめ
購入せずに、漫画喫茶などで一気に読むのが、個人的にはいちばん合っていると思う。

文字を追うのがしんどいときはアニメ版、
帰省などで移動時間がある方は、映像から入るのもいいかと思います。
実写映画版もあるので、物語の空気感を映像で味わいたいときにも向いている。


一言まとめ。

走っている学生をきっかけに思い出した、
走れなくなったあとの物語。
新年の余白に、静かに寄り添ってくれる一冊。

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