出雲大社と寝台列車。初めてのひとり旅【後編】
正解が分からないまま、順番に歩く
出雲大社の境内は、思っていた以上に広かった。
どこから回るのが正解なのか、正直よく分からなかった。
ガイドブックを片手に迷うこともできたけれど、
この日はそれをしなかった。
とりあえず、目の前の道を、順番に歩いてみることにした。
空気が澄んでいて、観光客もあまり多くない。
東京とはまったく違う時間の流れの中にいるような感覚だった。
急かされる感じがなく、
「次はどこへ行かなきゃいけない」という焦りもない。
ただ歩いて、お参りをして、御朱印を書いてもらった。
正解が分からなくても、
特に困ることはなかった。
並ばない、急がない、ひとりの昼ごはん
お昼は出雲そばを食べるつもりだった。
有名なお店には行列ができていたけれど、
その日は「ひとりで並ぶ気分」ではなかった。
だから、すぐに入れそうなお店を選んだ。

お客さんはそこまで多くなく、
静かな店内で、ゆっくりと食事ができた。
結果的に、そのほうがずっとよかったと思っている。
ひとり旅では、
「こうすべき」に合わせなくていい。
その時の自分の感覚を、優先していい。
海を見ながら、何も決められなかった時間
スターバックス出雲大社店でコーヒーを買い、
限定のマグカップを手に入れてから、稲佐の浜へ向かった。

4月の出雲は天気がよく、
浜辺のベンチに座っているだけで気持ちがよかった。
海をぼーっと眺めていると、
自分と同じように、ひとりで海を見ている人が何人もいた。
誰も喋らず、ただ、それぞれの時間を過ごしていた。
その静けさの中で、
これからの働き方について考えていた。
このまま今の会社で頑張るのか。
転職という選択をするのか。
どちらも頭に浮かんだけれど、
はっきりした答えは出なかった。
1時間以上、海を眺めていたと思う。
何かを決められたわけではない。
でも、不思議と焦りはなかった。
体を整えて、夜の列車へ
その後、お土産をいくつか買って出雲市駅へ向かった。
歩き回って汗もかいていたので、
駅の近くにある「らんぷの湯」に立ち寄ることにした。
タオルだけ買って、ゆっくりお風呂につかる。
あせもをかいていた体が一気にさっぱりして、
「ちゃんと休めている」という実感があった。
お風呂から上がり、休憩所で荷物を整える。
夕飯は回転寿司も考えたけれど、
あまりお腹が空いていなかった。
寝台列車の中で食べよう。
そう決めて、コンビニでお弁当や飲み物、お菓子を買った。
出発までの時間は、
出雲市駅の待合室で音楽を聴きながら、ただぼーっと過ごした。
この余裕が、大事だった。
走っているのに、止まっている夜
列車に乗り込み、個室へ向かう。
荷物を片づけていると、車掌さんが来てチケットを確認してくれた。
発車してすぐだった。

そこから先は、東京駅まで、ほとんど自分だけの時間だった。
パジャマではなく、ジャージとスウェットに着替え、
個室で夕飯を食べる。
廊下は明るく、トイレに行くのも怖くなかった。
人とすれ違うことも、ほとんどなかった。

下段のシングル個室から、
流れていく夜の景色を眺める。
走っているのに、静か。
動いているのに、気持ちは止まっている。
その感覚に、ほっとした。
朝7時、ちゃんと休めていた
朝はタイマーをセットして寝た。
寝坊することもなく、問題なく起きることができた。
着替えを済ませ、
朝7時に東京駅へ到着する。
車内でしっかり眠れていたから、
「このまま遊びに行けそうだな」と思えるくらいの余裕があった。
ひとり旅だったけれど、
周りを気にせず、自分のペースで楽しめた。
決断しなかった旅の意味
この旅は、
何かを決断するための旅ではなかった。
出雲で過ごした時間の中で、
明確な答えが出たわけでもない。
それでも、
「このままではもうもたないかもしれない」
という感覚を、静かに受け止めることはできた。
今思えば、
あの旅は“決めるため”ではなく、
揺らぐための旅だったのだと思う。
何も決められなかった時間が、
結果的に、今の私をつくっている。
次に出雲を訪れるなら、
今度は宿に一泊して、
出雲大社以外の場所も、もう少しゆっくり回ってみたい。
また、あの列車に乗る日が来たら。
今度は、もう少し軽やかな気持ちでいられたらいい。
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