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旅行は、前日までの準備と移動がいちばん楽しい

旅行当日よりも、
私は前日までの準備をしている時間のほうがずっと好きだ。

何を持っていくか、
どのバッグにするか、
充電ケーブルは足りているか。

まだ始まっていない旅を、
頭の中で何度もなぞる。
その時間が、もう旅の一部になっている。

そして当日。
少しだけ早起きをして、
非日常の服を着て家を出る。

この時点で、旅はもう始まっている。


ANAを利用する日は、
いつも少し早めに羽田空港第二ターミナルへ向かう。

時間に追われないためではなく、
空港で過ごす時間そのものが好きだからだ。

まずはスタバでコーヒーを飲みながら、
離着陸する飛行機をぼんやり眺める。

どこかへ向かう人、帰ってくる人。
それぞれの事情を勝手に想像しているうちに、
日常のスイッチが静かに切り替わっていく。


今回の年末年始、
羽田空港はとにかく混んでいた。

歩くスピードも、
通路の空気も、
いつもより少しだけ慌ただしい。

だからこそ、
空港内をブラブラする時間を大事にしたかった。

特に目的もなく歩いていたとき、
ふと目に入った見覚えのある店名。

「いつかティファニーで朝食を」に登場する
カレーうどんのお店cuud

第一ターミナルだけだと思い込んでいたので、
思わず足が止まった。

これは入るしかない!


選んだのは、
2種類食べられるセット。

せっかくの空港ごはんだから、少し欲張る。

スパイスの効いたカレーと、
うどんのやさしい出汁。
重すぎないのに、ちゃんと満足感がある。

うどんを食べ終わったあとは、ごはんと一緒に食べたり、だし割にすることができた。

予定していなかった店に入り、
予定していなかったものを食べる。

こういう偶然があるから、空港には早く来たくなる。


年末年始で混雑していたこともあり、
食事を終えたあとは
早めに保安検査場を通過して、
中でゆっくり過ごすことにした。

外のざわつきから離れれば、
あとは搭乗まで、静かな時間が待っている。

手荷物検査。
ここはもう慣れたものだ。

上着を脱いで、
カバンをトレーに乗せる。

靴はブーツじゃないことを
ちゃんとスタッフの方に見せ、
ポケットもすべて空。

「完璧だな」と、内心思う。

――その瞬間。

ピピッ。

原因はすぐに分かった。
ヘアクリップ。

完全に盲点だった。

あれだけ確認したのに。
あれだけ完璧だと思ったのに。

悔しい。


それでも、検査を終えて中に入ると、
さっきまでの混雑が嘘のように落ち着いていた。

椅子に座り、
搭乗口前に調達したコーヒーを飲みながら、
一息つく。

小さな失敗ひとつで、
「完璧」は簡単に崩れる。

でも、
こういう出来事まで含めて、
移動の時間はちゃんと記憶に残る。


旅行は、
前日までの準備と移動がいちばん楽しい。

そして移動の途中には、
予定外の寄り道や、
小さな失敗がついてくる。

完璧じゃなかったけれど、
だからこそ、
今回の羽田空港も、しっかり思い出になった。

悔しいけれど、
少しだけ笑える、
年末年始の空港の記憶として。

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