崖にへばりつく赤い電車。— 黒部峡谷トロッコと、湯の町・宇奈月

高岡から電車を乗り継いで一時間半ほど。富山の東のはずれ、宇奈月温泉に着くと、空気がひんやり澄んでいる。ここが黒部峡谷トロッコ電車の出発点だ。

トロッコは観光用に走っているけれど、もとは黒部川の水力発電所を造るための鉄道だった。宇奈月から山奥の欅平まで、全長二十キロあまり。四十を超えるトンネルと二十いくつの橋を、屋根だけのごく小さな車両でゆっくり進む。片道一時間二十分。窓ガラスがないぶん、峡谷の冷気とエンジンの音がそのまま体に届く。

深い谷底を流れる黒部川は、場所によって不思議なほど青緑に澄む。切り立った岩肌に線路がへばりつき、赤い橋がぽつんと架かる。人の手でよくこんな所に鉄道を通したものだと、乗るたびに思う。

ひとつ、行く前に知っておいてほしいことがある。二〇二四年の能登半島地震で途中の鐘釣橋が落石の被害を受け、しばらく全線を走れずにいた。二〇二六年は、九月末までは宇奈月から猫又までの折り返し運行。復旧工事が終わり、十月一日から宇奈月〜欅平の全線が再開する予定だ。奥まで行きたい人は、この時期を狙うといい。冬は豪雪で運休、例年おおむね四月下旬から十一月末までの季節運行だから、そこも頭に入れておきたい。

トロッコを楽しんだら、足元の宇奈月温泉もいい。この湯は無色透明でくせがなく、肌にやさしい。実は源泉は町にはなく、七キロ上流の山からはるばる引いてきた湯だ。大正の頃、発電開発とともに苦労して湯を運んだのだと聞く。

歩くなら、駅から続く「やまびこ遊歩道」。赤い新山彦橋を渡るトロッコを間近に眺められる。温泉街には気軽な足湯もあって、電車を見ながら足を浸せる。紅葉はだいたい十月下旬から十一月中旬。谷が赤や黄に染まる頃が、いちばん人気だ。

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