【黒い泥炭のような日記を捨てた日】目をつぶってやっつけた怪獣と、初めて向き合えた気がした
*『日記を捨てた日』のリライト版です*
20年くらい前のこと。
仙台の実家を、建て直すことになった。
そのため、いまだに実家においてある私の勉強机や、
その他の本やノートなどを、すべて整理しなくてはならなくなった。
とにかく、私は捨てるのが下手だった。
なので、小学校のノートから大学のノートまで、きれいに取ってある。
文庫本や、カセットテープやビデオもそのまま。
東京の家に持ち帰れないものは、なんとか実家の物置に置いてもらえることになったけれど、さすがにノートは捨てなくちゃ……。
そう思いつつも、ページをめくると、そこには思い出がいっぱい。
講義の内容が面白かった大学の頃のノートは、結局持ち帰ることにした。
授業中にこっそり書いた詩や絵も、いいものは破いて取っておいた。
いただいた手紙の束も、やっぱり捨てられなくて、老後の楽しみにしようと段ボール箱の中へ……。
そんな中、机の奥から、何冊もの日記が出てきた。
そういえば、私、日記をつけるのが好きだったなぁ。
きれいな表紙の物や、鍵がついているもの。
中学の時に親友とつけていた、懐かしい交換日記まで出てきた。
読み出したら、もう止まらない。
友人との交換日記は微笑ましく読めたけれど、
自分の「個人日記」を読んだ時、私は愕然とした。
その中には、私の中の黒い黒い、泥炭(でいたん)のようなものが、
びっしりと詰まっていたのだ。
もちろん、初恋のドキドキした思い出や、旅行の楽しかった記録も書かれていた。
しかし、大半を占めていたのは泥炭……
つまり、人の悪口や、自分に対するジレンマ。
両親への不満。
ひどいページになると、「みんな死んじゃえ!」とまで激しい言葉が書き殴ってあった。
大ショックだった。
私は、迷わず捨てた。全部。
だって、そういう自分とは、もう決別したんだもの。
でも、その日記を読んだことで、決別したはずの「自分の本当の姿」を初めて見た気がした。
目をつぶってやっつけた怪獣を、初めてちゃんと見て、触れた
……そんな感覚だった。
これを、本当に理解できたと思えたのは、物事を自然に受け入れられるようになってからのこと。
それでも、パッと一瞬で変われたわけじゃない。
自分にとって都合の悪いことが起こった時、
「原因が自分の中にもあるのかな?」
と考えることは、当時の私にはとても難しかった。
なにせ、それまでの人生のほとんどを、人と世の中のせいにして生きてきたんだから。
そんな私の人生の中で、大きな転機があった。
心に刻まれた、大きな傷ともいえる出来事。
その時、私は大切な主張はしたけれど、決して人のせいにしなかった。
全ては、自分の行動や、選択肢が生んだことだと認め、それを正直に言った。
すると、驚くほど物事は、私の願っていた方向に進み始めた。
たしかに、誰も傷つかなかったわけではないけれど、それまでの私の人生にはなかった、穏やかな結果がもたらされた。
自分に起こった物事を、ずーっとゆっくり遡って辿っていくと、原因のスタートには、小さな自分のあやまちがあったりする。
もしかしたら、その時は「いい」と思ってやったことかもしれない。
しかし、結果的に誰かを傷つけていたり、自分を傷つけていたり、嘘を言っていたり。
「あんたのせいなんだよ!」と誰かが言う。
本当は、謝ろうとしていた相手でも、そう攻撃されると、
「それは、あんたが前にこうしたせいだろう?」と、売り言葉に買い言葉で返してしまう。
でも、もしこちらから、
「ごめんよ。なんか、うまくいかなかったねぇ」と言えたら。
「いやいや、こっちこそ」と、相手の態度も軟化する。
そこから会話が始まり、理解が深まる。
自分の期待した答えを、相手が必ずしも返してくれるわけじゃない。
それさえ最初から分かっていれば、人間関係はうまくいく。
そして、全員と深くならなくてもいい。
ただ、敵対してしまったら、その先には何も生まれないから。
ああ、私はあの日記を書いていた頃よりも、ちっとはマシな大人になったんだなぁ……と思う。
たまには、自分で自分をほめてあげなくちゃ(笑)
「捨てる」というのは、本当に大切なことなんだなと実感する。
スペースを空けないと、新しいいいものって入ってこない。
自分の中の、もう使わなくなった古いアプリやデータは消去して、心の空き領域をいっぱいにしなくちゃね。
人との付き合いをスパッと捨てることは簡単だけれど、自分の中の「泥炭のようなドロドロした自分」を捨てるのは、とっても難しい。
だって、自分はかわいいから。
自分のことは、なかなか客観的に見られないものだから。
私は、古い日記たちを燃えるごみの袋にギュッと入れながら、
「ああ、これでひとつ、心に新しい空き領域が増えたかな?」と思った。
なんだか、とっても嬉しかった。
モノを捨てて、こんなに清々しく嬉しいと思ったのは、生まれて初めての経験だった。
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今日もいい日になるね。
あなたは、世界に一人だけの大切な人。
まずは自分を、ぎゅっと抱きしめてあげてね。
私も、私自身を大切にして、真っ直ぐな想いを歌に乗せていきます。
出会ってくれて、ありがとう。
჻჻჻჻჻჻჻჻჻჻჻჻჻჻჻჻჻჻჻჻჻჻჻჻჻
