あの部屋の話
大学時代の4年間、一人暮らしをしていた。木造アパートに住んでいた。2階。築年数も結構経っていて、学生用ということもあって、家賃は破格。学校に近いのと家賃が一番安かった部屋だったから、ということでそこを選んだ。
部屋の中はあまり広い、とは言えない。ユニットバス。水道の蛇口が物理的に外れたり、冷水しかシャワーが出なくなったり(故障だった)。階段が急で滑り台状態で落ちたりもした。クーラーはあるけれども気候柄なんとなくムシムシしている。洗濯ものを干す場所がなくって部屋の真ん前にあった手すり的な部分にかけていた記憶もある。
それでも、学校にはとにかく近くて家賃も安くて、それまで自室のなかった自分にとっては夢のような空間だった。
学校に近かったためにその部屋に住んでいた時に人生で一番家に人が来ていた。人見知りで内気で喋りもうまくなく、友達を家に呼ぶ経験がそこまでなかった私にとってとても楽しかった。
入学して一か月も経たないうちに同じ授業で一緒だった子を泊めたこと。同じ学部の子が部屋に来てレポートの追い込みをするはずが一緒に鍋を食べてアニメを観て終わったこと。悪天候で交通機関がストップした時に友人達をを泊めて子ども向け番組を観て過ごしたこと。同じサークルの子が家に来て寝ずに遊んだこと。仲が良かったフォロワーさんと毎日のようにずーっと長い時間通話をしていたこと。柔らかく声をかけてくれた優しい管理人さんのこと。いろんな思い出があった。
もちろん住んでいた中で泣いて帰るくらいに嫌なことも何度もあった。ただ、そういう嫌な思い出を思い出そうとしても、楽しい思い出がふわっと上書きして結局「泣いたけどその前後はなんだかんだ楽しかったな」になってしまう。思い出だから余計に楽しかった、と感じるのかもしれない。
人生の最後、少し遅く起きて授業を受けた後、授業終わりから学食の終わりギリギリまで仲のいい友人と話し込み、お菓子をたくさん買った後、あのアパートに帰って、夜中まで友人と話したりなかったことを通話をして明日楽しみだな、と思いながら寝る、という走馬灯を見たい。
