夫は家電なのか人間なのか
夫と暮らしていると、自分がとんでもない女なんじゃないかと思うことがある。
そんなはずはないと、夫の不満を書き出してみると、夫の長所だらけになる。しかもそこそこの量の。でもそのリストには、私が一番欲しいものはない。
目に見えないもの。
たぶん夫はそれがなんなのかを一生わからない。
夫が私のやりたいことに口を出したことはない。
でも、一度だけ、少し考えるような顔をしたのは、去年、パートをすると告げたとき。
しばらくの沈黙のあと、夫は仕事帰りのスーツのまま、キッチンの濡れないところに何かを置いた。まな板の手を止めずに横目で見ると、それは銀行の封筒だった。「もし金の問題ならこれで」 そう言って、洗面台に消えた。
濡れないようにと封筒を持ち上げると、見た目よりもずっと重い。その重みが夫のやり方らしくって、まな板ごとひっくり返してやりたくなる。
でも、そうしたところで、夫は何事もなかったみたいに片づけるだけ。
封筒はそのまま、夫が外した腕時計の横にポンと投げた。
いっそ、夫をATMと思えたら、話は早い。
うちのは加えて、フロ洗いもゴミ出し機能もついている。さすがは日本製。たまにブザーが鳴るけれど、毎日使っても壊れる気配は、ないように思う。
うまくやろうとした日は、もう思い出せない。
なんとか揺さぶってやろうと、ふらっと家出したり、ものを投げつけたりしたこともあった。
でも、いつからか、 “まずまずの妻”という点数を自分でつけられた日は、ぐっすりと眠れることに気がついた。
毎週月曜日、キッチンの調理台に弁当箱を5つ並べる。
家事もして仕事もして、なぜ夫の弁当まで作らなければならないのか、わからない。
それなのに、玉子焼きの塩を控えめにする、照り焼きにみりんを少し足す、いろどりのブロッコリーまで茹でているのだから、ますます意味が分からない。
自分のためにしている。
そうつぶやいても息苦しいのは、あの人を喜ばせたいと、思っているからかもしれない。
それが、いちばんややこしい。
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