52歳女、湖畔のカフェでまだ羨ましがってる。
平日、曇り、閉店3時間前。
こんな日ならたぶん座れる。
湖畔にある人気のカフェ。普段こういう店に興味がなさそうな地元の人まで「行ったほうがいい」って言うんだから、よっぽどなのだろう。
自宅から一時間半ほど車で走ると、ここだけ「湘南」みたいな店が、ぽつんと現れた。

店を入ると下に降りる階段があって、正面の壁はガラス張りになっていた。ガラスの向こうは、きらっと光る水面以外に何もない。ここでもう、今日の勝ちを確信する。
「一人です。」
「店内とテラス、どちらになさいますか?」
無言で外を指さすと、湖に手が届きそうな席に案内してくれた。

湖にくぎ付けになったまま、デッキの椅子をズズッと引いて腰掛けた。
周りに建物が、ほとんどないのがいい。
目の中に、天然のものしか入ってこない。
これがどれだけ贅沢なことか、40年東京にいたからよく分かる。
ここなら何時間でもいられそうだ。

カフェラテを飲みながら、水面の縞模様を眺めていた。
たまに、ちゃぽんと聞こえる音が、笑ってしまうぐらいかわいい。
気づけばずいぶん長いこと、湖ばかり見ていた。

風が気持ちいいから肌寒いに変わってきて、そろそろ帰ろうかと振り返った時、テラスには外国人観光客と、カップルしかいないことに気づく。
リア充多めの店だって、レビューに書いといてくれないかな。
せめてバッグぐらい、持ってくるべきだった。
「席、変わろうか?」
「なんで?」
「こっちの方が景色がよく見えるからさ。」
「あー、ほんとだぁ。」
「だろ?」
ああすごく楽しそう。
カップルのテーブルを横目で見ると、やたらうまそうなパンケーキまで置いてある。
なにそれ。
もうフルコースじゃん。

ひさびさに水の近くに来て、やっぱり自然はいいと思った。あと、誰かと景色を見ながら話すのも、いいと思った。景色もパンケーキもあんな会話も、全部いい。
まぁ。
会話の方はどうにもならないけど、
この次もたぶん一人で来るんだけど、
あのパンケーキだけは意地でもリベンジする。

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