【正義論界隈おじさん/おばさん20人が語る⓰】安楽死問題

① 理想国家おじさん (プラトン)
「ソクラテスは毒杯を自ら飲んだ。しかし国家の観点からは別問題だ。安楽死制度は国家が命を選別する機能を持ちはじめる—スリッピースロープの入口だ」
② ちょうどよさおじさん (アリストテレス)
「苦痛を放置する冷酷も、死を安易に処方する軽率も悪徳だ。慎慮ある例外はありうるが、制度は坂道に手すりを付けねばならない」
③ 内戦こわいおじさん (ホッブズ)
「国家が殺す権限を医療の顔で持つのは怖い。だが、苦痛に叫ぶ者を放置すれば、リヴァイアサンの威信も崩れる」
④ 所有権おじさん (ロック)
「自分の体は自分のものだ。と言いたいところだが、命は神から与えられた財産だ。苦しいからと勝手に処分することはできない」
⑤ 一般意志おじさん (ルソー)
「共同体が『苦しむ者は死んでよい』と言い出すなら、それは一般意志ではなく弱者切り捨ての特殊意志だ。慈悲と排除を混同するな」
⑥ 人格尊厳おじさん (カント)
「難問だ。自律的判断が可能な状態での選択と、苦痛・抑圧・社会的圧力下での選択を、制度が区別できるかを問え」
⑦ 自由と幸福おじさん (J.S.ミル)
「最大幸福と個人の自由、両方守りたい。本人が自発的に望み、全体の苦痛を減らすなら、個人の自由として安楽死を認めるべきだ」
⑧ 搾取ゆるさんおじさん (マルクス)
「気をつけろ! これは資本主義の最悪の罠だ。ひとたび法制化されれば、国家は本人の『自由意志』という名目で合法的にポアし始めるぞ」
⑨ 自生的秩序おじさん (ハイエク)
「社会的正義? 誰が設計するの? 安楽死を国家が設計してルール化するのは危険だ。個人の自発的選択に任せ、スリッピースロープを避けるべきだ」
⑩ 自由二種類おじさん (バーリン)
「自由には、消極的自由と積極的自由がある。自分の命を終わらせる積極的自由は守られるべきだ。ただし、弱者が強制される消極的自由の喪失を防げ」
⑪ 無知のヴェールおじさん (ロールズ)
「無知のヴェールを使え。自分が耐え難い苦痛の患者か、障害者か、貧しい高齢者か、医師かを知らずに、その制度を選べるか?」
⑫ 最小国家おじさん (ノージック)
「国家は小さく。本人と医師の自発的な合意による安楽死に、国家が口を出す理由などない。パターナリズムを言い訳にするな」
⑬ 権利は切り札おじさん (ドゥウォーキン)
「権利は切り札。耐え難い苦痛の中での自己決定権は、多数の『生命尊重』の感情で踏みにじれない。安楽死を認めるべきだ」
⑭ 共同体つっこみおじさん (サンデル)
「私たちは共同体の中で生き、死ぬ—死は純粋に個人的な選択ではなく、家族・医療者・共同体との関係の中にある」
⑮ 領域別ルールおじさん (ウォルツァー)
「医療、家族、福祉、財政を混ぜるな。苦痛緩和の領域に、介護費削減の論理が侵入した瞬間、安楽死は尊厳から処分へ変わる」
⑯ 徳と伝統おじさん (マッキンタイア)
「良き死とは何かを共同体は語らねばならない。だが、その物語が弱者に『潔く退け』と説くなら、徳ではなく残酷な美談である」
⑰ ちゃんと話し合えおじさん (ハーバーマス)
「本人の声なき安楽死は論外だ。だが本人の声だけでも足りない。家族、医師、社会が公開可能な理由を示し、批判に耐える制度が必要だ」
⑱ 実際にできることおじさん (アマルティア・セン)
「死を選べるかより先に、生きる選択肢が本当にあるかを見よう。緩和ケア、介護、孤立防止、経済支援がなければ、選択は痩せている」
⑲ 尊厳ある暮らしおばさん (マーサ・ヌスバウム)
「人間らしく生きる基本的能力を守れ。安楽死は尊厳を守る一方、ケアを必要とする人々の基本的能力(生命・所属)を脅かす」
⑳ 再分配だけじゃないおばさん (ナンシー・フレイザー)
「安楽死は結局、弱者の承認を奪い、経済的負担を理由に『死を選ばせる』構造を生む。スリッピースロープを避けるためにも、まずケアの承認と再分配を強化せよ」

