【正義論界隈おじさん/おばさん20人が語る(21)】国ガチャ問題

① 理想国家おじさん (プラトン)
「魂と国家の調和は一つのポリスで完結するものだ。『どこの国がお得かな?』とカタログショッピングのように国を選ぶなど、共同体への義務を放棄した欲望の奴隷の考え方だよ」
② ちょうどよさおじさん (アリストテレス)
「人はポリスの中でこそ徳を磨ける。誰もが勝手に国を出入りする無制限な移動はポリスを崩壊させるし、耐えがたい僭主制の下に生きることを強いるのも極端だ」
③ 内戦こわいおじさん (ホッブズ)
「私自身、内戦を恐れてフランスに逃げた。自然状態の恐怖から逃れるために、人々はリヴァイアサンに服従を誓う。しかしそのリヴァイアサンが市民を殺すなら、自己保存の権利は社会契約に優先する」
④ 所有権おじさん (ロック)
「国を“出る”自由と、他の国に“入る”権利は別だ。移住先の社会が同意しない限り、勝手に他国の土地には入れないのだよ」
⑤ 一般意志おじさん (ルソー)
「よそ者が『今日から私も入れろ』とやってきて連帯が維持できるわけがない。国境の壁こそが、市民の平等を守る砦なのだ」
⑥ 人格尊厳おじさん (カント)
「私の『永遠平和のために』を読め。人間には地球上のどこを訪れても敵対的に扱われない『普遍的訪問権』がある。国境という偶然の線引きで、人間の尊厳を排除してはならない」
⑦ 自由と幸福おじさん (J.S.ミル)
「個人の幸福の最大化と自由を考えるなら、国境なんて撤廃して誰もが才能を活かせる場所へ移動できるのが一番だ」
⑧ 搾取ゆるさんおじさん (マルクス)
「国境だとォ? たわけ! それはブルジョワジーが世界の労働者を分断し、安くこき使うために引いた架空の線だ。どの国を選ぶかではなく、国家という暴力装置そのものを廃絶しろ」
⑨ 自生的秩序おじさん (ハイエク)
「人々がより良い生活を求めて移動するのは、市場の『自生的な秩序』の自然な働きだ。国家が国境線を引き、移民の数を設計・制限しようとするから、密入国や経済の歪みが生じるんだよ」
⑩ 自由二種類おじさん (バーリン)
「個人が移動する自由(消極的自由)と、共同体が自らの文化やアイデンティティを守る権利(積極的自由)。これは正解のない価値の衝突であり、我々が直面する最も残酷な悲劇だ」
⑪ 無知のヴェールおじさん (ロールズ)
「私の『正義論』は国民国家の枠内で構成されており、国際正義については『万民の法』で論じたが、それは不十分だったことを認める。無知のヴェールをグローバルに適用すれば、国を選ぶ権利を認める方向に大きく傾く」
⑫ 最小国家おじさん (ノージック)
「国家は個人の移動を制限する道徳的権利を持つか?—最小国家論の観点から、これは難問だ。私の答えは出国権の絶対的保障と、入国権の条件付き承認だ」
⑬ 権利は切り札おじさん (ドゥウォーキン)
「権利は切り札。国を選ぶ権利は個人の基本権として、多数の国民感情で踏みにじれない。権利は権利だ」
⑭ 共同体つっこみおじさん (サンデル)
「国は空港ラウンジではない。歴史、言語、負担、記憶を共有する共同体だ。だが、その物語を理由に、外から来る者の尊厳を門前払いしてよいわけではない」
⑮ 領域別ルールおじさん (ウォルツァー)
「金・名誉・教育・政治を同じ物差しで測るな。国籍・所属は共同体の固有の領域だ。市場や平等の論理で国を選ぶな。複雑な正義を忘れるな」
⑯ 徳と伝統おじさん (マッキンタイア)
「物語と伝統に戻れ。国を選ぶのは、伝統や物語に根ざした自己を捨てる行為だ。共同体に忠実であれ。根なし草になるな」
⑰ ちゃんと話し合えおじさん (ハーバーマス)
「民族や血統で国境を閉じるのは野蛮だ。民主的な憲法を尊重し、公共圏での『コミュニケーション的討議』に参加する意志がある者なら、誰であれ新たな市民として受け入れるべきだ」(憲法パトリオティズム)
⑱ 実際にできることおじさん (アマルティア・セン)
「先進国の人間はパスポート一つで世界中を選べるのに、途上国の人間は生まれた国に閉じ込められている。この圧倒的な『ケイパビリティ』の格差を無視して、国内の分配的正義だけを語るのは偽善だよ」
⑲ 尊厳ある暮らしおばさん (マーサ・ヌスバウム)
「どの国に生まれたかという全くの偶然で、人間の『尊厳ある基本的能力』が奪われていいはずがないわ。私たちは自国の市民である前に『コスモポリタン』として、国境を越えた同胞への義務を負っているのよ!」
⑳ 再分配だけじゃないおばさん (ナンシー・フレイザー)
「正義論界隈のウチとソトの欺瞞、まさにそこよ。グローバル資本主義で南側から富を搾取し、国境で彼らを排除しておきながら、豊かな国内だけで『正義』を語るなんて! 」

