保育園で子どものケガが多い 気づく余裕がなくなっていく
前回の記事では、
ケガや事故が起きた遊具を使用禁止にしても、
根本の解決にはならないという話をしました。
配置人数を増やしても、
同じような場所で、
似たような状況でケガが起きる。
では何が繰り返させているのか。
今回はその部分を掘り下げていきます。
次のことを考えながら動いている
繰り返されるケガや事故の背景には、
いくつかの要因が重なっています。
保育士が全体を見きれていない。
危険な場所や状況を把握しきれていない。
ヒヤリハットとして意識されないまま、
その日が終わっている。
この三つが、現場でよく重なって起きています。
クラス運営をするときは、
次のことを考えながら動いています。
保育室の中では、
たくさんの子どもが同時に動いてる。
泣いている子がいる。
喧嘩が始まっている。
そのあいだにも、次の活動への切り替えを
判断しなければなりません。
決められた時間に給食を食べるためには、
いつ片づけを始めるのか。
トイレや手洗いを、
どのタイミングで済ませるのか。
何時に遊びを切り上げるのか。
そういった判断が、一日の中で何度も求められます。
この判断は、頭をかなり使います。
とくに経験の浅い保育士ほど、
「自分は保育士に向いていないのかもしれない」
そう感じやすくなります。
余裕がなくなると、
「次に何を見るべきか」
その判断自体が難しくなっていきます。
しかし実際の現場では、
お迎えの時間までに
複数人分の連絡帳を仕上げなければならない。
月案、個別カリ、日週案の作成がある。
行事の準備、会議、午睡チェック、
遊具の消毒、お便り、保護者対応。
これらを勤務時間の中でこなしていく必要があります。
何かに追われている状態が、
一日を通して続いています。
緊張が高いまま、次へ、また次へと動いています。
経験の浅い保育士が、
この状態の中で安定して動き続けることは、
簡単ではありません。
休憩時間に事務仕事をして、
残業して、家に持ち帰って仕事をしている状態では、
子どもたち全体に目を向け続けるということが、
現実として難しくなります。
高い緊張の中で、小さなことが積み重なっていく
時間と書類に追われたまま動いている状態では、
クラスの先生との関係がうまくいかない、
人間関係に悩む
これらがいつも以上に
辛いことになります。
余裕がない時ほど、
小さな言葉が強く残ります。
また、こういう状況の時は、
かならずと言っていいほど、
伝達ミスも起きます。
メモや口頭で伝えられた内容を、
頭の中に留めておく余裕がない。
「伝えた」
「聞いていない」
という状況が生まれ、
それが自分へのミスとして重なっていきます。
落ち込む。反省する。しかし状況は変わらないまま、次の日がきます。
「もう無理かもしれない」が積み重なる
高い緊張状態が続くと、
働き続けることに限界を感じてしまいます。
その結果
職員の定着率が下がり、
毎年離職者が出ます。
人手不足になり、
募集をかけても応募が来ない。
高い紹介料を払って採用する。
その繰り返しが続いていきます。
退職の理由は、
大きな出来事だけではありません。
高い緊張が続き、
休憩でしっかり休めない。
家に帰っても仕事がある。
そういう日々の積み重なりの中で、
先輩からの何気ない一言や、
一つのミスが、
そのまま退職へとつながることがあります。
経験の浅い保育士ほど、
余裕がないぶん、その影響を受けやすいです。
伝達漏れが続くと、
「言った」
「聞いていない」
そういうやり取りが増えていきます。
それが保護者への伝達漏れにもつながり、
信頼が少しずつ損なわれていくのも事実です。
悪い口コミが広がれば、
入園児の募集にも影響が出てきます。
遊具の使用禁止が増えていくと、
その遊具で遊びたかった子どもの気持ちや、
遊びを通じた心身の発達を
促す機会を狭めてしまいます。
禁止が増えれば活動の幅が狭まり、
日週案で活動を組み立てることに
保育士が難しさを感じていく、
という流れも生まれます。
判断できる状態が、まずある
保育士が子どもと関わる中で、
追われ続けている状態のままでは難しくなります。
月案、個別カリ、連絡帳の重さがそのままでは、
休憩時間は書類に使われ続けます。
一人の保育士に情報が集まったままでは、
伝達漏れとミスが繰り返されます。
書類の負担と、情報の持ち方
追われ続けている状態では、
注意散漫や集中力の低下が起きます。
その状態で動き続けることで、
危険な場所や状況への気づきが遅れていきます。
ケガや事故だけを防ごうとしても、
保育士が追われ続けている状態のままでは、
同じことが繰り返されやすくなります。
書類の負担や、
一部の人だけが情報を抱え続ける状態を、
現場の中でどう変えていくのか。
「気をつける」だけでは回らなくなっている現場を、
どう整えていくのか。
その部分を、次の記事で書いていきます。
