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合唱譜読みマウンティング!

音楽の能力なんていうのは、子供(または学生)にとって、わかりやすくマウントの対象になりやすい。
他にといえば体育、美術、運動神経にセンスや感性だったり、ふわっとしたモノが問われやすい教科というか。
学力成績?それもそうだけど。それ以外で。

文化祭の目玉行事の、校内合唱コンクールでピアノ伴奏が弾ける人は、それだけで羨望の的だし、私の高校では指揮者もクラスから選出されたので、指揮者もそうだった。

とはいえ、ピアノ伴奏や指揮ができるほどに突出した能力がある人は、わざわざ他の人とできるできないでゴタゴタ揉めているところを見たことがない。
よっぽど何かがあって返り討ちにした、それぐらいだろう、あったとしても(なさそう)。

ゴタゴタするのは結局のところ、誰彼構わず黙らせる程の力はなくても、音楽系の部活に所属しているという肩書きを持っている系か、なんとなくギター等々バンド始めたからには音楽わかるぜ!系か、そのへんのヤツだ。

あとは、私みたいに既に辞めてしまったから、実は音楽に長けていることを、知らない人は知らないヤツか。

いつかの記事で書いたと思うが、私は高校では新聞部に所属していて、音楽には関わっていなかった。
関わっていなかったが、1年の途中まではエレクトーンを続けていたし、辞めたからといって音楽の能力が突然消えるわけでもない。

さらには、選択授業でも音楽を取っていたし、私と一緒の授業に割り振られていた人は、私が多少なりとも音楽ができるということを(エレクトーン歴が長かったことも含め)知っていた。

3年の文化祭の合唱コンクール、ピアノは弾けないし、指揮もするつもりも(できるわけも)なかったが、最後ぐらいは他のクラスに負けるのも癪だから、歌うぐらいは頑張って歌うか~、部活も引退しちゃったしな~、推薦の試験も結果待ちだしな~、とそれまでの2年間よりはやる気を出しつつ、ゆるく練習に参加していた。

それまでの時よりはマシとは言っても、3年生でも同じクラスにはほぼ友達が居ない状態だったので、歌う以外は楽譜を見るか、どう聞いても音が外れているところを指揮者に伝えるぐらいだったか。

私はアルトだったが、どうしてもパートとして音が取れていないところがあって、指揮者も何度も違うというし、私もいい加減イライラしていた。
そんなとき、お互い一番嫌っていた女子がすっと私のところにやってきて、言った。

「正しい音を教えて欲しい」

そして歌ってみせ、「合ってる?」と言った。

度肝を抜かれた。おッまえ、ほんっま、どの面下げて誰に話しかけてんねん。
(2年の時に「嫌いだからグループから出て行って」と言い放ってハブってきたヤツ、まあ、それはまた別の話)

「合ってへん」
「・・・・・・。3年として予選落ちするわけにいかへんやろ。教えて欲しい」
「うちである必要ないやん」
私は、指揮者とその他音楽系の部活に入っている子の方へ行くよう促した。
彼女は、また少し沈黙してから、

「音楽の授業とかもやけど、去年も、今までの練習みても、アルトで1番ちゃんと音判ってるのはあんたやってわかってる」

ふざけんなよ、都合良い時ばっか利用しやがってぶっ飛ばすぞ。
・・・・・・と言えたら良かったのかどうなのか、未だにわからない。

ただ私は、その時そこまで好戦的ではなかったし、あれ以上不協和音を聞きたくなかった。合唱のね。人間関係じゃなくね。マジで。
(難しくてね、全員上下バラバラに外れてごらんなさいよ、ひどいわ!!)

しかたなく、私は彼女に正しい音を教えた。彼女が覚えるまで。
そうすると、判らなくなるたびに彼女が歌いながら寄ってくるようになったので、正しい音で歌い返して訂正した。

それを見ていた他のアルトの子たちもやってくるようになり、私はちょっとした音程取り芸人になった。

指揮者の子は助かる~~!!とニコニコであったので、まあ、それについてはお役に立ててよかったですハイ。という感じではあった。

問題は、他の音楽系の部活に入っていた子たちである。
「どうして、私たちの方に訊きに来ないのか」
と言って睨みつけてくるわ、「音楽系の部活でもなかったくせに!私の方ができる!」と陰口たたくわ。

すっごい面倒くさかった。どうぞどうぞどうぞ、私の代わりに教えてあげてくださいよ。
私はあなたと違って、譜面にカタカナなんかふらなくても読めますけどね。
私はあなたと違って、高校から始めたわけではなくて、4歳からヤ○ハやっていたものでね、大体絶対音感的に音判るんだよね、申し訳ないね。

悔しかったんだろう。高校生の私でもわかったよ。
だから、私は何も言わなかった。
何も言わなかったけど、すぐ近くで、
「なんであの子に訊くんよ?」
「だってちゃんと音判ってるから」
「そんなわけないやん!」
「実際歌えるようになってきてるやろ」
「…………」
と2人で言い合いをして、いつも陰口叩いていた方がこっちを見て目が合った時、つい鼻で笑ってしまった。
怒り狂ってたけど、それぐらいは許して欲しい。
私も若かったしそんなできた人間じゃないんでね!

なんでそんなに目の敵にされたのか、全くもって判らない。
私にその音楽の能力とやらで負けたら、一体全体どうなるっていうんだ。
(とりあえず3年で初めて同じクラスになったから、音楽のことは知られてなかったと思う)

思うに、クラスにもなじめず、地味で運動神経も悪く、多少成績が良いだけのヤツと見下していた私が、思いもかけず(自信のある?)音楽で足下にも及ばなかったと思わされて動転していたんだろう。

そんなの、気にしなくてよかったのに。私は彼女の所属していた部活の楽器は演奏できない。
楽譜や音はわかっても、ギターだか、マンドリンだか、ウクレレだかわかんないけど、それらは弾けないんだ、堂々としていろよ。
運動神経も良くて、美女だったし。他のことは知らん。クラスメートであること以上の興味はなかった。

そうして、文化祭がやってきて、私たちのクラスは無事に予選を突破した。
優勝こそできなかったが、指揮者が最優秀指揮者賞を取って、個人的には大満足だった。
誰にも言わなかった私の目標も果たせたし(どうしても勝ちたいクラスがあった、そこは予選突破もならなかった。そのために嫌いなヤツにも協力したところもある)。

同時に、私たちの音楽マウント対決も静かに終わった。

つっかかりまくってきた彼女は今はどうしているんだろうなあ、と今ふと思うけど、まあ、楽しく音楽やっていてほしいなとは思う。
辞めちゃってたらもったいない……かといわれるとそれもよくわかんないけど。
同い年の大人なんだから、人は人、自分は自分でさ。

私もそうする、というかそうしたいなという、そういう話。

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