川の街リュオーレの物語⑱ 小景(9) 丘の庭
小さくちぎったような雲が空に広がっている。
ハルナギは土をいじる手を休め、立ち上がって滲むような青と白を眺めた。
こんな雲を川漁師は魚の鱗にたとえ、丘の農家は羊にたとえて呼ぶそうだ。
自分なら、何と呼ぶだろう。
乾いた茶葉を細かくしたような……いや、やめておこう。
ふと、少し鋭い鳴き声が聞こえた。
庭の隅にある枯れた木に、鳥がとまっている。
ここには、昔の茶農家が残していったお茶の木がある。
何本かは今も葉をつけている。けれど、枯れてしまったものも多い。
茶色い鳥は、あたりを見回しながら続けて鳴いた。
よく種をついばみにくる顔なじみより、少し大きい。
昨年も、同じ頃に見た気がする。
何となく、秋の鳥として記憶にあった。
ハルナギはふたたび腰を下ろし、ツルの先につながるイモをもう数本、
土の中から掘り出した。
太いものも、細いものもある。
今日は、これぐらいにしておこう。
風が通る場所に一本ずつ並べてから、裏手にある水場で手を洗った。
茶色の鳥は、もうどこかへ飛んでいったようだ。
草むらで鳴く虫たちの声も、いつのまにか静かになってきている。
庭では、この季節に咲く花が色とりどりに咲いている。
薄い紫、白、黄色……。
鐘を逆さにしたような形の花も混じっている。
その間を、小さな蜂たちが行き交っている。
お茶を、飲もうか。
しばらく眺めてから、ハルナギは小屋の方へ向かった。
リュオーレの物語は、少しずつ続いていきます。
各話への道しるべは、こちらから。
