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伝わる朗読とは/第10回:ドラマの役者から学ぶ声の使い分け

理性の音。 感性の音。 声の配合が 物語を動かす。

 ドラマ『相棒』で水谷豊さんが演じる杉下右京(古い!ですね。)は、朗読者にとって「声の使い分け」のことを伝えています。
 彼が事件の複雑な背景を長々と説明するシーンがありますよね。このとき、彼は極めて明瞭で突き通るような整数次倍音を用います。これにより、視聴者は膨大な情報をストレスなく「理解(理性)」することができます。
 しかし、一方で相棒との何気ないやり取りや、ふと漏らす溜息には、カサカサとした非整数次の成分が絶妙に混じり合います。この理性的成分と情緒的成分のコントラストこそが、あの独特の風格を生んでいるのだと思います。

 対照的な例として、ドラマを見ていて「この新人の役者さん、なんだか浮いているな」と感じることがありませんか? その原因の多くは、演劇の技術の未熟さもあるのかもしれませんが、声が「はっきりしすぎている」ことにも一因があるように私は思います。
 全てのセリフを舞台のように声を張り、整数次倍音全開で届けてしまうと、日常使っている言葉の使い方とギャップができてしまい、そうすると聞き手の「感性のガード」が閉じてしまいます。舞台という広い空間では認められる技術も、映像や朗読の世界では、時に「過剰な情報」となってしまうのだと思います。

 朗読においても、このバランス感覚が重要です。説明調の箇所をハスキーに読みすぎれば内容が伝わりませんし、逆に全ての言葉をアナウンサーのように明快に読みすぎれば、物語の情緒は死んでしまいます。私たちは常に、ドラマの役者が現場で空気を読み取るように、今、自分が放つべきなのは「理性の音」なのか、それとも「感性の音」なのかを考えながら表現する必要があるのだろうと思います。


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