童話『なんでもExcelに書くバケモノ』
AIに童話を書いてもらいました。
むかしむかし、ある小さな村に、へんてこなバケモノがすんでいました。
そのバケモノは、山より大きな背中をまるめて、夜になると村の家々をのぞきこみます。
けれども、子どもを食べたり、畑を荒らしたりはしません。
バケモノがすることは、ただひとつ。
なんでもExcelに書くことでした。
村の朝つゆの数。
パン屋のおばさんがこぼしたため息の回数。
犬のポチがしっぽをふった角度。
赤ちゃんが笑った時刻。
風が「ひゅう」と鳴った音量。
バケモノはそれを、ぜんぶExcelに書きました。
A列には「日付」。
B列には「できごと」。
C列には「気持ち」。
D列には「備考」。
バケモノはにやりと笑って、太い指でキーボードをたたきます。
「世界は、表にすれば安心なのだ」
そう言って、セルを緑色にぬりました。
村人たちは、はじめは困っていました。
「わしの昼寝まで記録されておる」
「私の恋心がピボットテーブルにされてるわ」
「ぼくの秘密基地の場所が、シート3にある!」
けれどバケモノは悪気がありません。
むしろ、村のことを忘れないように、ぜんぶ大切にしまっているつもりでした。
ある年の冬、村に大雪がふりました。
雪は三日三晩やまず、道も、橋も、畑も、白くうもれてしまいました。
村人たちは、どこに薪があったか、どの家にお年寄りがいるか、どの道が安全か、わからなくなってしまいました。
そのとき、バケモノが山のむこうから現れました。
「待っておれ。わしのExcelに、ぜんぶある」
バケモノは大きなノートパソコンを開きました。
シート「村のあれこれ」。
フィルター「薪」。
条件付き書式「危険な道は赤」。
すると、どの家に薪があり、どの道を通ればよくて、どのおばあさんが一人で暮らしているか、すぐにわかりました。
村人たちは助かりました。
「ありがとう、Excelバケモノ!」
みんなは口々に言いました。
けれども、その夜。
バケモノはひとりで、雪の上にすわっていました。
村の子ども、ミナがそっと近づきました。
「どうして泣いているの?」
バケモノは、涙をぽたりと落としました。
涙は雪にしみて、小さな丸い穴をあけました。
「わしは、ぜんぶExcelに書けると思っていた」
バケモノは言いました。
「でも、今日みんなが『ありがとう』と言った声を、どのセルに入れればよいのかわからなかった」
ミナは少し考えてから、バケモノのとなりに座りました。
「入れなくていいんじゃない?」
「なに?」
「忘れたくないことでも、表にしなくていいものがあるよ。胸の中に置いておけばいいものもあるよ」
バケモノは、ぽかんとしました。
「胸の中……それは、どのフォルダだ?」
ミナは笑いました。
「フォルダじゃないよ」
バケモノはしばらく黙っていました。
それから、Excelを開きました。
A列には「日付」。
B列には「できごと」。
C列には「気持ち」。
そしてD列に、こう書きました。
「書かなくてもよい」
次の日から、バケモノは少し変わりました。
朝つゆの数は、数えたり数えなかったりしました。
パン屋のおばさんのため息は、聞かなかったことにしました。
犬のポチのしっぽは、ただ見て笑いました。
それでも、ときどきバケモノはExcelを書きました。
村の種まきの日。
橋の修理の予定。
お祭りの準備リスト。
みんなの誕生日。
バケモノのExcelは、もう村を閉じこめる箱ではありませんでした。
村を助ける地図になりました。
やがて春が来て、雪がとけました。
ミナはバケモノにたずねました。
「ねえ、今日のこともExcelに書くの?」
バケモノは大きな鼻をふんふん鳴らして、空を見上げました。
青い空。
白い雲。
遠くで鳴る鳥の声。
春のにおい。
バケモノはにっこり笑いました。
「今日は、保存しない」
そう言って、バケモノはノートパソコンを閉じました。
そして村人たちといっしょに、春の道を歩いていきました。
どこにも入力されない、すばらしい一日でした。
