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シリーズ「じいじとばあばの物語」⑭

第14夜 男気支店長のアドバイスと
    制服のまま東京へ飛んだ日

― 寮母・しのぴーが孫に語る、“あったかくて切ない人生の記憶” ―

 

予備校寮の夢を叶えるため、制服のまま東京へ飛んだあの日。


兄夫婦と同じ会社で働いていた頃は、銀行とのやり取りはすべて兄の担当だった。
けれど、きーぼうの営業成果もあり、会社を分けることになった。父の意向で、将来きょうだい間で争いにならないよう、卒寮生で弁護士になった人に相談し、きれいに三等分に。
新会社では、父が社長、きーぼうが専務、そして私は常務として経理や総務を担うことになった。

そんな折、地域に大手予備校が開校することになり、その最初の寮を建てる話が舞い込む。きーぼうは必死で営業し、すべてわが社の責任で用意できるならと話が進む。
「これが会社の大きな転機になる」——そう感じた私たちは、建設資金の融資を受けるため、銀行へ足を運んだ。

そこで出会ったのが、のちに“男気支店長”と呼ぶことになる人だった。
きーぼうの熱い想いに耳を傾けてくれたが、融資希望額に対して実績も担保も足りない。
しばし沈黙の後、支店長はこう提案してくれた。
「予備校に建設協力金をお願いしてみてはどうですか?」

しかし私たちは融資交渉の初心者。
「建設協力金、ですか?あの…どう進めたらいいですか?」
おずおずと尋ねる私達に、支店長が言った。
「じゃあ、今から言うことをメモしてください」
私は慌てて手帳を開き、必死で書きとめた。

会社に戻ってすぐ文案を作成し、きーぼうに見せると——
「今からその文書を持って東京へ行ってきて」

すぐに航空会社へ電話して、東京行きのチケットの予約をした。
午後3時の便に乗れば、今日の業務中には先方に渡せる!
私は事務員の制服姿のまま、書類を片手に空港へ走った。
「間に合いますか!?」とカウンターで叫びながら、東京行きの便に飛び乗った。
飛行機のエンジン音と、胸の鼓動が同じ速さで響く。

東京の予備校本部に着くと、担当者は不在だったが、その上司が対応してくれた。
「わかりました、上にかけあってみましょう」
これから最終便でとんぼ返りだと告げると、「それは驚きました。また社長とご一緒に来てくださいね」と見送られた。

数日後、この行動が銀行にも伝わったらしい。
支店長は「やっぱり満額でいきましょう」と笑顔で言った。
「なぜ、実績も担保も足りないのに満額出していただけるのですか?」
「いや~、あなたには熱い想いがある。
まるで、昔の『自分を担保に金を貸してくれ!』と迫った実業家のようだ。
こんな人に融資できなくて、地銀の役目は果たせないと思ったのです。」
結局、予備校からの建設協力金は不要になった。
後に聞けば、予備校でも建設協力金の決済は下りていたのだという。

銀行支店長の男気といい、予備校の上司といい、同じ思いで
——“この二人なら、必ずやり遂げる”そう思ってくれていたのだろう。

あの日の制服は、人生でいちばん誇らしい“勝負服”になった。

「しのぴーの事務員さん制服姿?!見てみたかったなあ…!」

そうね、今からは想像もつかないくらいスリムだったのよ、フフフ。
おやすみなさい。

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