緊張は「悪」じゃない── 問題は“高いこと”ではなく、コントロールできないこと ──
こんにちは。
今日もつらつらと書き連ねていこうと思います。
今回のテーマは
「緊張は悪ではない」
というお話です。
若手のセラピストほど、一度はこんなふうに思ったことがあるんじゃないでしょうか。
緊張が高い = 悪い
まずは緊張を落とさないといけない
とにかく“力を抜かせる”ことが正解
実はこれ、半分正しくて、半分危険です。
今日は
「なぜ緊張が問題になるのか」
「本当に向き合うべきポイントはどこなのか」
を、臨床の視点から整理していきます。
■ 緊張が高いこと自体は“問題”ではない
まず大前提として。
筋緊張が高いこと自体は、必ずしも悪ではありません。
筋緊張は、本来
姿勢を保つため
動きを成立させるため
不安定さを補うため
に使われる、必要な生理反応です。
実際、僕たちも
バランスを崩しかけた瞬間、
変なところに力が入った経験、ありますよね。
あれは
「身体を立て直すために、必要だから緊張が上がった」
という状態です。
脳性麻痺の子どもたちは、
この“立て直しの瞬間”が日常的に起きている
と考えると、少し見え方が変わります。
■ 問題は「緊張が高いこと」ではなく「調整できないこと」
ここが、今日一番伝えたいポイントです。
問題なのは
緊張が高いことそのものではなく、
上げる必要がない場面でも上がってしまう
下げたい場面でも下がらない
状況に応じて調整できない
という 「緊張コントロールの難しさ」 にあります。
つまり、
緊張が高い = 悪
ではなく
緊張を“選べない”ことが問題
という視点です。
■ なぜ姿勢コントロールが難しいと緊張が上がるのか
では、なぜ脳性麻痺の子どもたちは
緊張を上げやすくなるのでしょうか。
その主要因のひとつが
姿勢コントロールの不安定さです。
姿勢が不安定だと、
どこに体重が乗っているかわからない
支持基底面が曖昧
次に何が起こるかわからない
こうした状態になります。
すると身体はどうするか。
「とりあえず固める」
という戦略をとります。
これは防御的ですが、
同時に最も確実な安定戦略でもあります。
だから、
姿勢が崩れやすいほど
→ 緊張で固める必要が増える
→ 結果的に緊張が高く見える
という構図が生まれます。
■ 「緊張を下げる」より先にやるべきこと
ここで、若手が一番ハマりやすい落とし穴があります。
それは、
緊張が高い
→ まず緩めよう
→ うまくいかない
という流れ。
でも実際には、
緊張を下げる前に、
“緊張を上げなくて済む条件”を作る
ことの方が、ずっと重要です。
その鍵になるのが
感覚入力です。
■ 感覚入力は「緊張を調整するための土台」
姿勢コントロールに関わる感覚は、
固有感覚(荷重・関節圧・筋の位置情報)
視覚
前庭感覚
などが統合されて成立しています。
この中でも、
臨床で扱いやすく、影響が大きいのが
固有感覚入力です。
● 緊張が高い子の場合
崩れやすい
位置がわからない
だから固める
→ 支持感・荷重感を明確にすることで
「そんなに力を入れなくても大丈夫」
という状態を作りやすくなります。
● 緊張が低い子の場合
身体の位置を感じにくい
姿勢を保つための手がかりが少ない
→ 荷重・関節圧・ゆっくりした伸張で
身体図式と姿勢制御の手がかりを増やすと、
必要な緊張を出しやすくなります。
ここで大事なのは、
緊張を上げる/下げる
ではなく
緊張を“使える状態”に近づける
という考え方です。
■ ストレッチ=緊張を落とす、ではない
ここも誤解されやすいポイントです。
速いストレッチや、力任せの伸張は
伸張反射を誘発しやすく、
かえって緊張を高めてしまうことがあります。
若手の方には、ぜひこう捉えてほしい。
速く伸ばす → 反射が出やすい
ゆっくり伸ばす → 感覚入力として入りやすい
圧・荷重 → 支持感を作る
ストレッチは
「伸ばす行為」ではなく、
感覚入力の手段として使う。
この視点があるだけで、
介入の質はかなり変わります。
■ まとめ:緊張を見る視点を一段深く
最後に、今日の話をまとめます。
緊張は悪ではない
問題は「高いこと」ではなく「調整できないこと」
姿勢が不安定だと、緊張で固める必要が生まれる
緊張を下げる前に、上げなくて済む条件を作る
感覚入力は、緊張調整の土台になる
若手のうちは、
「緊張をどう下げるか」に目が行きがちです。
でも一歩進んで、
なぜ、この子は
その場面で
その緊張を“使わざるを得ない”のか
ここを考えられるようになると、
臨床の景色は確実に変わります。
緊張は、敵じゃない。
使い方を選べていないだけ。
そんな視点で、
次に目の前の子を見てみてください。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
また次の記事でお会いしましょう。
