第4話 「千葉県某所、名もなき野池のブラックバスと、静寂のトップウォーター」
(……ふぅ。たどり着いた。地図にも載っていないような、ただの池。)
(だが、こういう場所にこそ、奴らは潜んでいる。都会の喧騒を逃れた、緑のシェルター。)
(……静かだ。風もない。水面はまるで鏡。俺の心まで見透かされているようだ。)
(さて、どう攻める。相手はブラックバス。一筋縄ではいかない、知恵比べの相手だ。)
(食べるためじゃない。ただ、奴と対等に渡り合いたいだけだ。)
(……キャスティング。シュッという音だけが、森に吸い込まれていく。)
(……出ない。沈黙。焦るんじゃない、俺はバスを釣りに来たのか、それともこの静寂を釣りに来たのか。)
(いや、両方だ。この『待ち』の時間さえも、俺の血肉になっていく。)
(……腹が、減った。)
(釣るだけ釣って、あとは逃がす。俺に残るのは、心地よい疲労感と、空っぽの胃袋だけだ。)
(さあ、どこかに飯屋はないか。この野池の近くで、俺を温めてくれるような店は……。)
(……よし、探そう。次は『食』の戦場が、俺を待っている。)
