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『仮説思考』徹底解説――少ない情報で最速の結論を出す技術

こんにちは!りょーたです😊

【情報を集めてから考える人は、いつまでも答えにたどり着けない】内田和成『仮説思考』徹底解説――少ない情報で最速の結論を出す技術

「もう少しデータを集めてから判断しよう」

「関係者全員へ話を聞いてから、結論を考えよう」

「情報が足りないので、まだ何とも言えません」

仕事では、慎重に情報を集める姿勢が評価されます。

できるだけ多くの資料を読む。

過去の事例を調べる。

あらゆる可能性を分析する。

数字を細かく確認する。

情報が十分にそろってから、正しい答えを出す。

一見すると、非常に真面目で合理的な仕事の進め方です。

しかし、実際にこの方法で進めると、調査や分析が終わらなくなることがあります。

売上が落ちた理由を調べるために、あらゆる商品のデータを集める。

顧客満足度を改善するために、すべての顧客へアンケートを行う。

渋滞の原因を調べるために、交通量、速度、OD、信号、事故、天候、沿道施設など、考えられるデータをすべて整理する。

調べれば調べるほど、新しい疑問が出てきます。

この数字も確認した方がよい。

別の期間とも比較した方がよい。

ほかの地域も見た方がよい。

追加のヒアリングも必要だ。

そして、締切直前になってから大量の情報を前にして、

「結局、何が言えるのだろう」

と考え始めます。

そのような仕事の進め方を根本から変えるのが、内田和成さんの名著、

『仮説思考――BCG流 問題発見・解決の発想法』

です。

本書は2006年に東洋経済新報社から刊行された全240ページのビジネス書です。序章の「仮説思考とは何か」から始まり、「まず、仮説ありき」「仮説を使う」「仮説を立てる」「仮説を検証する」「仮説思考力を高める」という流れで構成されています。出版社は本書の中心的な主張を、仕事の速さと出来栄えを決めるのは「分析力ではなく、仮説である」と紹介しています。(東洋経済STORE)

著者の内田和成さんは、日本航空を経てボストン・コンサルティング・グループに入社し、日本代表やシニア・アドバイザーを務めました。本書は、その約20年間のコンサルティング経験を基に、限られた時間と情報の中で問題解決を進める方法を体系化したものです。(東洋経済STORE)

仮説思考とは、簡単にいえば、

情報をすべて集めてから答えを考えるのではなく、最初に仮の答えを置き、その答えを確かめるために必要な情報だけを集める思考法

です。

もちろん、根拠もなく思いつきで結論を決めることではありません。

最初に仮の答えを作る。

その答えが正しいなら、どのような事実が見つかるはずかを考える。

必要なデータを調べる。

間違っていれば修正する。

再び検証する。

この繰り返しによって、限られた時間の中で答えの精度を高めていきます。

今回は、『仮説思考』の内容を、

仕事。

データ分析。

資料作成。

会議。

問題解決。

生成AI。

転職活動。

などへ応用できる形で徹底的に解説します。


1.仮説とは「仮の答え」である

仮説という言葉を聞くと、研究者や科学者が使う難しいものに感じるかもしれません。

しかし、私たちは日常生活でも無意識に仮説を立てています。

朝、電車が遅れている。

「事故があったのかもしれない」

友人から返信が来ない。

「忙しいのかもしれない」

パソコンが動かない。

「ネットワークの問題かもしれない」

これらは、すべて現時点での仮の答えです。

ビジネスにおける仮説も基本は同じです。

売上が下がっている。

「新規顧客の減少より、既存顧客の離脱が主因ではないか」

残業が増えている。

「仕事量の増加より、承認待ちによる手戻りが原因ではないか」

バスの利用者が減っている。

「運行本数より、主要な目的地へ接続していないことが問題ではないか」

まだ証明されていません。

しかし、仮の答えがあることで、何を調べるべきかが明確になります。


2.仮説がない人は、情報を集めることが仕事になる

仮説を持たずに調査を始めると、

何が必要な情報なのか。

どこまで調べれば十分なのか。

どの結果が重要なのか。

がわかりません。

そのため、集められる情報をできるだけ集めることになります。

過去10年分のデータを整理する。

全商品を比較する。

すべての関係者へヒアリングする。

考えられる切り口を一通り分析する。

作業量は増えます。

資料も厚くなります。

しかし、情報が多いことと、答えへ近づいていることは同じではありません。

調査すること自体が目的になり、

「何を明らかにするための調査なのか」

が見えなくなります。

仮説がある人は、情報を集める前に考えます。

この問題の原因として、最も可能性が高いものは何か。

その仮説が正しければ、どの数字が動いているはずか。

どの事実が見つかれば、仮説を否定できるか。

必要な情報が決まるため、調査の範囲を絞れます。

3.優れた人は、情報量が多いのではなく「考えながら集める」

仕事ができる人を見ると、

多くの業界知識を持っている。

大量のデータを処理できる。

頭の中に多くの事例がある。

と感じます。

もちろん、知識や経験は重要です。

しかし、本当の差は情報量だけではありません。

情報を受け取るたびに、

これは自分の仮説を支持しているか。

反対する事実ではないか。

別の仮説を考える必要はないか。

と考えています。

仮説がない人は、10個の情報を10個のまま受け取ります。

仮説がある人は、10個の情報を、

仮説を支持する情報。

仮説を否定する情報。

判断には影響しない情報。

へ分けます。

情報を増やすだけでなく、答えとの関係を考えながら整理する。

それが仮説思考です。


4.「まず事実を集める」は、必ずしも中立ではない

先に仮説を立てると、

思い込みが強くなる。

自分に都合のよい情報だけを集めてしまう。

と心配する人もいます。

そこで、

「私は先入観を持たず、まず事実を集めます」

と言いたくなります。

しかし、人間が完全に中立な状態で情報を集めることは困難です。

どのデータを見るか。

誰に話を聞くか。

どの期間を比較するか。

どの質問をするか。

その選択には、すでに何らかの考えが含まれています。

つまり、仮説を持たないつもりでも、無意識の仮説に従って行動している可能性があります。

それなら、仮説を明確に言葉へした方がよい。

自分は現在、何を原因だと考えているのか。

どの情報が出れば考えを変えるのか。

見える形にすれば、周囲から反論してもらえます。

仮説を持つことより、無意識の思い込みを仮説だと認識しないことの方が危険です。

5.仮説と決めつけは、まったく違う

仮説思考を誤解すると、

「最初に結論を決め、その結論に合うデータを集める方法」

になってしまいます。

これは仮説ではなく、決めつけです。

決めつける人は、

自分の考えに合う情報だけを見る。

反対するデータを無視する。

自分の仮説を守ろうとする。

仮説思考を使う人は、

現時点ではAだと考える。

しかし、Bという事実が出たらAを捨てる。

新しい仮説へ修正する。

という姿勢を持ちます。

仮説は、自分の正しさを証明するためのものではありません。

できるだけ早く、自分の間違いを発見するためのものです。


6.良い仮説は、行動や判断を変える

仮説なら何でもよいわけではありません。

良い仮説へ答えを出すと、その後の行動が変わります。

たとえば、売上が減っている会社で、

「景気が悪いのではないか」

と考えたとします。

仮説としては成立します。

しかし、景気が原因だとわかった後、会社として何ができるのかが曖昧です。

一方、

「主力商品の売上減少は、市場全体の縮小ではなく、既存顧客の更新率低下によるものではないか」

という仮説なら、結果によって対策が変わります。

市場縮小が原因なら、別市場への進出を考える。

既存顧客の離脱が原因なら、商品改善や継続支援を行う。

仮説を立てる時には、

答えがAの場合とBの場合で、次の行動が変わるか

を確認します。

どちらでも同じ行動になるなら、その仮説を調べる優先度は高くありません。

7.良い仮説は、具体的に検証できる

「もっと頑張れば、売上が上がるのではないか」

「顧客満足度が低いことが問題ではないか」

これらは曖昧です。

何を確認すれば、正しいと判断できるのかわかりません。

検証できる仮説へ変えるなら、

「新規顧客への訪問件数を増やせば、3カ月以内に商談件数が増えるのではないか」

「顧客満足度低下の主因は、商品品質ではなく、問い合わせへの回答時間ではないか」

とします。

確認する数字や比較対象が見えてきます。

良い仮説には、

対象。

原因。

結果。

条件。

のいずれかが具体的に含まれています。

仮説を読んだ人が、

「では、このデータを見れば確かめられる」

と考えられる状態が理想です。


8.良い仮説には、理由がある

単なる思いつきと仮説の違いは、理由を説明できるかです。

「利用者が減ったのは、運賃が高いからだと思います」

なぜ、そう考えるのか。

アンケートで運賃への不満が多い。

値上げ後から利用者が減っている。

近距離利用の減少が大きい。

競合する交通手段より割高である。

このような観察や過去の知識があれば、仮説として検証する価値があります。

仮説は、最初から厳密に証明されている必要はありません。

しかし、

なぜ、その可能性を疑うのか

という出発点は必要です。

9.仮説は一つではなく、複数持つ

最初に思いついた仮説だけへ固執すると、視野が狭くなります。

売上が減った原因として、

顧客数が減った。

客単価が下がった。

購入頻度が下がった。

高価格商品の構成比が下がった。

複数の可能性があります。

渋滞の原因でも、

交通需要が増えた。

右折車が直進車を阻害している。

信号時間が需要に合っていない。

路上駐停車によって容量が低下している。

工事やイベントによる一時的な影響がある。

などが考えられます。

最初から一つへ決めつけず、可能性の高い仮説を複数作る。

その中から、

影響が大きそう。

検証しやすい。

対策へつながる。

ものを優先します。

仮説思考とは、最初の直感を信仰することではありません。

複数の可能性を比較しながら、最も筋のよいものへ近づくことです。


10.分析の前に「どの結果が出るか」を考える

多くの分析では、データを集計してからグラフを見て、特徴を探します。

仮説思考では、分析前に結果を予想します。

たとえば、

「右折車の増加が渋滞の主因である」

という仮説を立てたとします。

正しいなら、

右折交通が多い時間帯ほど速度が低下する。

右折待ちが直進車線まで伸びる。

右折交通が少ない日は、同じ総交通量でも渋滞が弱い。

右折レーンのある交差点では影響が小さい。

といった結果が予想できます。

ここまで考えれば、必要なデータがわかります。

反対に、どのような結果が出ても仮説を正しいと言えてしまうなら、検証になりません。

分析前に、

正しいなら何が起こるか。

間違っているなら何が起こるか。

を考えることが重要です。

11.仮説を先に置くと、分析量を減らせる

データ分析が得意な人ほど、さまざまな分析を試したくなります。

時間帯別。

曜日別。

年齢別。

地域別。

商品別。

顧客属性別。

分析できる項目が増えるほど、作業量も増えます。

しかし、意思決定に必要なのは、すべての特徴を発見することではありません。

仮説へ答えることです。

右折車の影響を確かめたいなら、

右折交通量。

滞留長。

旅行速度。

信号現示。

を優先する。

利用減少が通院需要の変化によるものか確認したいなら、

通院目的の利用者数。

医療施設の移転。

時間帯別利用。

乗降場所。

を見る。

目的のない分析を100個行うより、仮説を左右する分析を3個行う方が価値があります。


12.精度を上げすぎる前に、方向を確かめる

分析では、数字を正確にすることが重要です。

しかし、最初から小数点以下まで精密に計算する必要があるとは限りません。

内田さんは、コンサルティングで統計を使う目的は、学術研究のように数字そのものを極限まで正確にすることではなく、経営者の意思決定を助けることだと説明しています。若手時代、散布図の点を精密に打っていた内田さんに対し、先輩が「相関があるかどうかがわかればよい」という趣旨の指摘をした経験も紹介されています。(ダイヤモンド・オンライン)

最初に必要なのは、

この方向に関係がありそうか。

この原因が大きそうか。

この対策に可能性があるか。

を確認することです。

方向が違うのに、精度だけを高めても意味がありません。

まず大まかに当たりをつける。

有望な仮説へ絞った後で、必要な精度まで分析する。

これが効率的な順番です。

13.仮説が間違っていたら、仕事は失敗なのか

仮説を検証して、間違っているとわかることがあります。

「既存顧客の離脱が原因だと思ったが、離脱率は変わっていなかった」

この時、

仮説が外れた。

無駄な分析をした。

失敗した。

と感じるかもしれません。

しかし、仮説が否定されたことも成果です。

既存顧客の離脱ではないとわかれば、次の可能性へ進めます。

問題なのは、仮説が外れることではありません。

検証せずに信じ続けること。

外れた証拠を隠すこと。

何も学ばず、同じ仮説へ固執することです。

良い仮説思考では、

立てる。

確かめる。

捨てる。

修正する。

という動きを素早く繰り返します。


14.仮説を早く捨てられる人ほど強い

自分で作った仮説には愛着が生まれます。

時間をかけて考えた。

上司へ説明した。

資料にも書いた。

そのため、間違いを認めるのが難しくなります。

仮説を守るために、反対するデータへ理由をつけ始める。

今回は特殊な事情があった。

サンプル数が少ない。

現場が正しく運用しなかった。

もちろん、本当に特殊事情がある場合もあります。

しかし、仮説を守ることが目的になっていないかを確認しなければなりません。

仮説は道具です。

自分の人格ではありません。

仮説が間違っていても、自分の価値が否定されたわけではない。

早く間違いに気づき、次へ進めた人の方が、正解へ早く近づきます。

15.失敗する人は「正しい仮説」にこだわりすぎる

仮説思考を学ぶと、最初から優れた仮説を作ろうとします。

誰も考えつかない鋭い仮説。

ほぼ確実に当たる仮説。

完璧な論理を持つ仮説。

しかし、最初から正解を当てる必要はありません。

仮説の価値は、

最初から正しいこと

だけではなく、

調査や議論を前へ進めること

にあります。

最初の仮説が粗くても、検証すれば精度は上がります。

仮説を作れずに一週間悩むより、現時点の答えを一時間で作り、翌日検証する方が前へ進みます。

仮説は完成品ではありません。

更新する前提のたたき台です。


16.ヒアリングでも、仮説を持って質問する

人へ話を聞く時、

「何か困っていることはありますか」

「自由に意見を聞かせてください」

と質問するだけでは、一般的な回答になりやすいものです。

相手も、自分の問題を完全に言語化できているとは限りません。

仮説があれば、質問が具体的になります。

「朝の便を利用しなくなったのは、運行時刻が勤務時間に合わなくなったからでしょうか」

「入力作業より、承認を待つ時間の方が負担になっていませんか」

「価格より、導入後のサポートへ不安を感じているのでしょうか」

仮説が正しければ、詳しい話を引き出せます。

違っていれば、

「そうではなく、本当の問題は……」

と修正してもらえます。

ただし、誘導尋問にならないよう注意が必要です。

「私はこう考えていますが、違う可能性もあります」

という姿勢を持ち、相手の言葉に合わせて仮説を変えます。

17.会議は「意見を出す場」から「仮説を検証する場」へ変える

目的が曖昧な会議では、参加者が思いついた意見を話します。

私はAだと思う。

経験上、Bではないか。

現場ではCという声がある。

意見が増えますが、何も決まりません。

会議前に仮説を置けば、議論を整理できます。

「売上減少の主因は、客数よりも客単価の低下である」

この仮説に対して、

支持するデータは何か。

反対する事実は何か。

追加で何を確認すべきか。

仮説が正しければ何を行うか。

を議論します。

会議の役割が、発言することから、答えを前進させることへ変わります。


18.上司への相談にも、仮説を添える

若手社員が上司へ、

「どうすればよいでしょうか」

とだけ聞くと、上司が最初から考えなければなりません。

仮説を持って相談するなら、

「A案がよいと考えています。理由は費用が低く、短期間で実行できるからです。ただし、効果が限定的な点を懸念しています」

と伝えます。

仮説が間違っていても構いません。

上司は、

費用より効果を優先するべき。

そのリスクを見落としている。

B案との比較が必要。

と具体的に助言できます。

仮説を持って相談する人は、答えを丸投げしていません。

自分なりに考えたうえで、思考の弱い部分を借りに来ています。

19.資料は、仮説を証明するために作る

資料作成でありがちな失敗は、調べた内容をすべて載せることです。

調査概要。

集計結果。

過去との比較。

ヒアリング結果。

参考事例。

ページ数は増えますが、何を伝えたいのかわかりません。

仮説があるなら、資料の役割が明確になります。

結論。

結論を支える主要な根拠。

根拠を示すデータ。

反対意見への回答。

次に取るべき行動。

必要なものだけを配置できます。

仮説思考は、分析を速くするだけでなく、資料を短くします。

書く内容を減らすのではありません。

意思決定に不要な内容を減らすのです。


20.仮説思考とピラミッド原則はつながっている

『考える技術・書く技術』では、最上位に結論を置き、その下へ根拠や事実を配置します。

しかし、結論がない状態では、ピラミッドを作れません。

そこで仮説思考が役立ちます。

現時点での仮の結論を置く。

なぜそう言えるのかを考える。

必要な根拠を確認する。

データによって結論を修正する。

最終的に、検証された結論をピラミッドの頂点へ置く。

つまり、

仮説思考は、結論を作る技術。

ピラミッド原則は、その結論を構造化して伝える技術。

二つを組み合わせると、考える段階から伝える段階まで一貫します。

21.仮説思考と『イシューからはじめよ』の違い

『イシューからはじめよ』では、

「今、本当に答えを出すべき問いは何か」

を見極めます。

『仮説思考』では、その問いに対して、

「現時点で最も可能性の高い答えは何か」

を考えます。

たとえば、

売上を上げるにはどうするか

という大きなテーマがあります。

まずイシューを、

「売上減少の主因は、顧客数と客単価のどちらか」

へ絞る。

次に、

「顧客数ではなく、既存顧客の購入頻度低下が主因ではないか」

という仮説を立てる。

その後、必要なデータを検証する。

問いを選ぶことと、仮の答えを置くことは別ですが、密接につながっています。


22.『論点思考』との関係

内田和成さんは、『仮説思考』の姉妹編として『論点思考』も執筆しています。

出版社は『論点思考』を、企業や職場に山積みになっている問題の中から、本当に解決すべき問題を見つけ、それへ集中するための技術と説明しています。(東洋経済STORE)

二冊を整理すると、

論点思考は、何を解くか

仮説思考は、どのような答えがありそうか

検証は、その答えが本当に正しいか

を扱います。

間違った問題へ優れた仮説を立てても、成果は出ません。

正しい問題を選んでも、何も仮説を持たず調べ続ければ時間がかかります。

問題設定と仮説設定の両方が必要です。

23.生成AI時代ほど、仮説を持つ人が強くなる

生成AIを使えば、大量の情報を短時間で得られます。

考えられる原因を挙げる。

データを要約する。

分析方法を提案する。

文章や資料の下書きを作る。

しかし、AIが多くの案を出せるからこそ、

どの可能性を優先するのか。

何を確かめるべきか。

どのデータが結論を変えるのか。

を人間が決めなければなりません。

仮説を持たずにAIへ質問すると、一般論が大量に返ってきます。

仮説を持って質問すれば、

「この原因が正しいか確認するには、どのデータが必要か」

「この仮説を否定する可能性がある事実を挙げてほしい」

「A案とB案のどちらを選ぶべきか、判断基準を整理してほしい」

と使えます。

AIは仮説検証を速めます。

しかし、何を仮説とし、どの答えへ責任を持つかは人間の仕事です。


24.転職活動にも仮説思考を使える

転職活動で不採用が続くと、

資格が足りない。

年齢が不利。

未経験だから無理。

と考えます。

しかし、それらはまだ仮説です。

本当の原因は、

応募先と経験のつながりが伝わっていない。

職務経歴書が作業内容だけになっている。

求人が求める経験と応募先がずれている。

面接で志望理由を説明できていない。

可能性もあります。

仮説を分けて、小さく検証します。

同じ経歴書で応募先だけ変える。

職務経歴書を改善する。

経験を生かしやすい職種にも応募する。

転職エージェントや採用経験者から意見をもらう。

結果を比較することで、原因へ近づけます。

「自分には市場価値がない」

という大きすぎる結論を出す前に、検証できる仮説へ分けることが重要です。

25.日常生活でも仮説を持つと、感情だけで判断しにくくなる

友人から返信が来ない。

「嫌われたのかもしれない」

仕事で評価されない。

「上司は自分を評価する気がない」

体調が悪い。

「大きな病気かもしれない」

人は一つの仮説を、事実のように信じることがあります。

しかし、別の可能性もあります。

忙しい。

返信を忘れている。

評価基準が伝わっていない。

仕事の成果が見えにくい。

睡眠不足や疲労が続いている。

仮説を複数持てば、一つの解釈だけで感情を大きく動かされにくくなります。

もちろん、健康や安全に関する問題は、自己判断だけで済ませず、必要な専門家へ相談するべきです。

仮説思考は、専門的な判断を代替するものではありません。


26.仮説思考の最大の敵は、確証バイアス

人は、自分の考えを支持する情報を集めやすい傾向があります。

この商品は売れると思った。

だから、好意的な顧客の声を重視する。

この部下は能力が低いと思った。

だから、失敗した場面ばかり覚えている。

この投資先は成長すると思った。

だから、良いニュースだけを見る。

これでは、仮説検証ではなく仮説擁護になります。

対策として、

仮説が間違っているとすれば、どのような理由か。

反対の結論を支持するデータはないか。

誰なら自分の考えへ反論できるか。

を考えます。

自分の仮説へ最も強い反論を作り、それでも残るかを確認する。

それによって、仮説の精度が上がります。

27.安全性が重要な仕事では、速さだけを優先しない

仮説思考は仕事を速くします。

しかし、速ければ速いほどよいわけではありません。

医療。

法務。

構造物の安全。

個人情報。

巨額の投資。

人命や大きな損失に関わる判断。

このような分野では、仮説に基づいて調査範囲を絞りすぎると、重大な見落としにつながる危険があります。

仮説を使って調査を設計しつつ、

法令上必要な確認。

安全基準。

第三者による照査。

想定外のリスク。

を省略しないことが必要です。

仮説思考は、必要な確認を飛ばすための技術ではありません。

重要な確認へ時間を集中させる技術です。


28.経験が少ない人の仮説は、外れて当然である

良い仮説を立てるには、知識や経験が役立ちます。

過去に似た問題を見たことがある。

業界の構造を知っている。

データの特徴を理解している。

経験が増えるほど、当たりのよい仮説を作りやすくなります。

しかし、経験が少ないから仮説を立ててはいけないわけではありません。

むしろ、仮説を立てて検証することで学習速度が上がります。

自分の予想を書く。

実際の結果を見る。

なぜ外れたかを考える。

次の予想へ反映する。

ただ答えを教わるより、

予想と現実の差

を確認した方が、知識が残ります。

仮説思考は、経験者だけの技術ではありません。

経験を早く蓄積するための技術でもあります。

29.仮説思考力を高める三つの習慣

①調べる前に、自分の答えを書く

検索する。

上司へ聞く。

AIへ質問する。

その前に、

「自分は、現時点でどう考えるか」

を一文で書きます。

外れても構いません。

答えを見る前に予想することで、自分に不足していた視点がわかります。

②結果を予想する

分析や会議の前に、

仮説が正しければ、どのような結果になるか

を考えます。

結果を見た後に説明を作るだけでは、どのような結果でも自分に都合よく解釈できます。

③外れた理由を記録する

予想と違った時に、

仮説が悪かった。

前提知識が不足していた。

データの取り方に問題があった。

状況が途中で変化した。

など、理由を記録します。

失敗した仮説も、次の仮説を良くする材料になります。


30.この本を誤解しやすい五つのポイント

誤解①「勘で結論を決めればよい」

仮説には、観察、経験、知識などの理由が必要です。

思いつきを検証せず採用することではありません。

誤解②「最初の仮説を証明する」

目的は仮説を守ることではありません。

間違っていれば捨て、よりよい答えへ修正します。

誤解③「データは少なくてよい」

不要なデータを減らすのであって、判断に必要な証拠まで減らしてよいわけではありません。

誤解④「とにかく速く結論を出す」

速さだけでなく、検証と修正が必要です。

仮説を出した段階では、まだ事実ではありません。

誤解⑤「経験豊富な人だけが使える」

経験者は当たりのよい仮説を立てやすい一方、初心者も予想と検証を繰り返すことで成長できます。

31.今日から始める「仮説思考」7日間

1日目 現在の仕事へ仮の答えを置く

今抱えている問題について、

「原因は○○ではないか」

と一文で書きます。

2日目 別の仮説を二つ作る

最初の考えだけに固執しないよう、別の可能性を考えます。

3日目 必要なデータを絞る

各仮説について、

何を確認すれば正しいか。

何が出れば否定されるか。

を書きます。

4日目 小さく検証する

大量の調査を始める前に、少量のデータ、一人へのヒアリング、一部の業務などで確認します。

5日目 反対意見を作る

自分の仮説が間違っているとすれば、どのような理由があるかを考えます。

6日目 仮説を修正する

得られた情報を基に、最初の仮説を残す、変える、捨てるのいずれかを選びます。

7日目 結論と根拠を一文にする

「○○であるため、△△すべきである」

という形で、現時点の結論を整理します。


まとめ

内田和成さんの『仮説思考』は、

情報が不十分でも、思いつきで決断するための本ではありません。

大量のデータを集める必要はないと主張する本でもない。

本書が教えるのは、

最初に仮の答えを持ち、その答えを確かめるために必要な情報を集める

という仕事の進め方です。

多くの人は、情報を集めてから考えます。

あらゆる資料を読む。

関係者全員へ話を聞く。

分析できるデータをすべて集計する。

情報がそろった後で、結論を考える。

しかし、何を知りたいかが決まっていなければ、情報収集には終わりがありません。

一つ調べれば、新しい疑問が生まれる。

追加分析が増える。

資料が厚くなる。

それでも、答えが見えない。

仮説思考では、順番を逆にします。

最初に、

現時点で最も可能性の高い答えは何か

を考える。

次に、

その答えが正しければ、どのような事実が見つかるはずか

を予想する。

必要なデータを集める。

結果が違えば仮説を捨てる。

新しい仮説を立て、再び検証する。

この循環によって、少ない情報から始めながら、答えの質を高めます。

仮説は、最初から正しくなくてよい。

外れることもあります。

むしろ、仮説が外れた時に何を学ぶかが重要です。

この原因ではないとわかった。

別の可能性が高くなった。

自分には、この知識が不足していた。

それらは、すべて次の仮説を良くする材料になります。

仮説と決めつけは違います。

決めつける人は、自分に都合のよい情報を集めます。

仮説思考を使う人は、自分の考えを否定する情報も探します。

決めつける人は、間違いを認めません。

仮説思考を使う人は、間違いがわかれば早く修正します。

仮説は、自分の正しさを証明するものではない。

自分の間違いを早く見つけるための道具です。

また、仮説は一つだけでなく、複数持つ必要があります。

売上が落ちた。

顧客数が減ったのか。

単価が下がったのか。

購入頻度が下がったのか。

複数の可能性を作り、優先順位をつけて調べます。

仮説を立てる前には、正しい問いも必要です。

何を解くかを決めるのが論点思考。

その問いへの仮の答えを作るのが仮説思考。

答えの根拠を整理し、相手へ伝えるのがピラミッド原則。

これらは、別々の技術ではなく、一つの問題解決の流れとしてつながっています。

生成AI時代には、仮説思考の重要性がさらに高まります。

AIは大量の情報をまとめられます。

原因候補も数多く出せます。

しかし、選択肢が増えるほど、

どの可能性を優先するか。

何を検証するか。

どの結果なら判断を変えるか。

を決める力が必要です。

仮説のない人がAIを使うと、情報がさらに増えます。

仮説を持つ人がAIを使うと、答えへ近づく速度が上がります。

仕事が速い人は、作業速度だけが速いのではありません。

何を調べるかを決めるのが速い。

不要な分析を捨てるのが速い。

間違いを認めて修正するのが速い。

その結果、最終的な答えへ早く到達します。

情報が足りないから、まだ考えられないのではありません。

情報が足りない時点でも、現在わかっている範囲で考える。

仮の答えを作る。

そして、その答えを検証するために動く。

情報を集めれば、いつか答えが現れるのではありません。

仮説があるから、膨大な情報の中から答えにつながる事実を見つけられるのです。

完璧な情報を待ってから動く人は、情報がそろわない限り前へ進めません。

仮説を持つ人は、不完全な状態からでも一歩を踏み出し、行動しながら答えを更新できます。

それが、『仮説思考』から学べる、

少ない情報と限られた時間で、仕事の速さと質を同時に高める思考法だと思います。


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