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岐路

BBクリームを貰った日の帰り道、嬉々としてキャップを開けると、中にはとろっとした液体が、まるでジョンブリアンの油絵具のような色彩を輝かせていた。そして美大受験時代を思い出す。油絵具をこねたり、それを薄く広げたりするあの感覚を。

BBクリームはニキビ跡やくま、青ヒゲなどを隠してくれる、所謂メンズメイカーのビギナーアイテムである。早速薄っすら塗ってみる。すると肌の余計な情報が抹消され、顔が若干のっぺりとした。正直これが良いのか悪いのかはよくわからない。ただ、塗るというその行為だけは楽しい。これを続けた先には何があるのだろう。Mattとかがいるのだろうか。

地元は広島県の田舎町で、父や、友達の親は大半が肉体労働者だ。そして小さい頃から、汗にまみれた、化粧とは無縁の無骨な男をたくさん見てきた。例えるなら岩城滉一のような渋さを纏った男たち。私はMattへの憧れと共に、そういう汗と酒とタバコの匂いのする渋い男への憧れもある。

20代も半ば、そろそろどうやって歳を取っていくか覚悟を決める時がきている。メンズメイクをしていたら、もう2度と故郷には帰れないかもしれない。そんな街だ。このBBクリームを1本使い切ったら、私は次を買うのだろうか。

峠の霧がかった薄暗闇で、Mattと岩城滉一が手招きしている。

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