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令和9年度介護報酬改定に向けて (R8.6.29訪問入浴)ー内容と考察ー

介護報酬改定の議論が始まっています。
これは私自身の理解を深める上で、自分の思考を整理するプロセスです。
「ここからの読み取り」が私なりの現時点での考察となります。
報酬改定セミナーを依頼頂く地域もさまざまで、その土台ともなります。
ページも記載していますので、元データも参考になさってください。

第259回(R8・6・29) 社保審-介護給付費分科会 資料2「訪問入浴」


(1)サービスの中身と実態

・初回加算77.0%、サービス提供体制強化(Ⅰ)21.2%。看取り連携体制加算4.0%、認知症専門ケア加算0.1%、中山間・特別地域は数%と低調。 (P5)

【ここからの読み取り】
「看護1+介護2」の3人体制+入浴車という"重装備"が、このサービスの固定費の重さの根っこ。1回1,266単位でも、3人+車で動くので採算の壁が高い。さらに、看取り・中山間・認知症の加算は用意されているが、算定率が極めて低いところからも、実態に合っていないことが推察される。
前回改定で、訪問入浴を"最期まで入浴を支える医療複合ケア"として位置づけ直しているが、看取り加算の算定4.0%から現場に届いてる様子がない。


(2)事業所・利用者・費用

・請求事業所数は予防を含め減少傾向(H25 2,677→R7 1,862(約30%▲)。(P7)
・都道府県では、高齢者人口10万対の請求事業所数に地域差がある(3.4〜8.4等)。(P8)
・受給者数も減少傾向(ピーク約8万人→直近 約6.5万人台)、利用者の90%以上が要介護3以上、要介護度5が約50%。 (P10〜P12)
・費用額はほぼ横ばい〜微減、R6実績で約565億円。介護総費用に占める割合は0.5%(居宅サービスで最小級)。 (P13・P15)
・1事業所あたり利用者41.8人、1人1月あたり約7.0万円。 (P14)

【ここからの読み取り】
全国の要介護度別認定者数(各年1月末)は、
要介護3
平成25年(2013年)71.3万人→令和7年(2025年)91.3万人(+28.1%)
要介護4
平成25年(2013年)66.2万人→令和7年(2025年)87.7万人(+32.4%)
要介護5
平成25年(2013年)58.8万人→令和7年(2025年)56.0万人(▲4.7%)
3・4・5合計は、平成25年(196.3万人→令和7年(235.0万人(+19.7%)

違和感があり調べてみると、「訪問入浴を必要としうる人(要介護3以上の認定者)は全国で19.7%増えたのに、実際に訪問入浴利用者は逆に減っているという、需要の母集団と実際の利用にギャップがある。
あらゆる原因から、必要とされつつも、維持できない現状が想定される。

一方、団塊の世代が85歳以上に達する2030年以降、要介護5の押し上げ圧力が強まる可能性がある。更に地域医療構想が進み、馴染の自宅に戻るためには、どんな状態にあっても家で風呂に入れるかが一つの要因となる。


(3)経営状況

・収支差率は、R6決算5.3%(税引後4.5%)、金額ベース18.4万円/月。
(推移:R3=3.6→R4=3.0→R5=5.1→R6=5.3%) 
・全平均4.7/訪問介護9.6/訪問看護10.3/訪問リハ10.8%。  (P17・P18)

【ここからの読み取り】
収支差率5.3%は全サービス平均並みだが、金額ベース18.4万円/月は訪問系で薄い部類。重装備の割に、1事業所に残る額が小さい。
訪問入浴という業界全体がシュリンクする要因になっていると考えられる。

(4)事業の休止・廃止

・回答事業所のうち休止1.7%・廃止1.8%。休止・廃止の理由は「人員の不足」88.0%が突出、次いで「利用者の減少」60.0%。 (P23)

【ここからの読み取り】
畳む理由の圧倒的1位は人員不足(88%)。他の事業所とも同様であるが、訪問入浴の場合は、3人1組なので、1人欠けると1チームが止まるという、調整の難易度がかなり高い。


(5)重装備のコスト(入浴車・移動)

・入浴車の所有台数:1台所有が51.6%(平均2.32台)。 (P24)
・入浴車1台の月あたり燃料費:「2万〜3万円未満」が51.9%で半数。 (P25)
・入浴車1台の月あたり走行距離:「1,500〜2,000km未満」が40.0%。 (P26)
・訪問1回あたり平均移動時間:「20〜30分未満」57.0%が最多。 (P27)
・サービス提供回数(令和7年6月):100〜300回未満が54.2%。 (P28)
・1回のサービス提供時間:「40〜50分」65.0%(7割以上が40分以上)。 (P29)

【ここからの読み取り】
このサービスの本当の"見えないコスト"は燃料ではなく、移動時間20〜30分×3人分の「稼げない時間」。提供時間40〜50分に対し、移動だけで1/3近くを、3人分の人件費をかけて費やしている。先にも述べたが、ここが1人で訪問できる事業所との決定的な違いである。


(6)重度・医療ゆえの不安定さ

・当日キャンセル:1事業所あたり1か月平均5.2件。要介護5が多く、急な容態変化で当日キャンセルが多い。 (P30)
・日常的な医療的ケアを受けている利用者は全体の約66%。事業所あたり10〜20人が最多(49.2%)。 (P31)
・医療的ケアの内容:「胃ろう・腸ろうの管理」91.1%、「褥瘡の処置」87.5%が上位。 (P32)

【ここからの読み取り】
利用者の3分の2が日常的に医療的ケアの対象者で、当日キャンセルが一定存在することを前提とした対象集団である、結果、準備した3人・入浴車が空振りとなり、損失が、経営を徐々に削る。


論点を踏まえて

国の論点は「どの地域でも安定提供」「加算の簡素化」と一般論に留まっている。だが訪問入浴は他のサービスと違い、"1人では成立しない、3人1組でしか提供できない"という構造的な特殊性を持つ。
また、国が目指す地域医療構想が現実化する中にあっては、"3人一組"を前提にした小規模分散型の事業モデルとして論じるに値すると思う。


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