American OpticalのTimes モノとルキ#86
眼鏡好きの間で「クロツー」と呼ばれる、
ブラックとクリアのツートンカラー。
それが本当に似合うようになるには、
ある程度の年月という名の熟成が必要らしい。
AOの「Times」をかけるたび、
僕は鏡の中のボクとそんな無言の合意を交わす。
わずかに目尻に向かって吊り上がったシェイプは、
このフレーム以外にはない繊細なディテール。
そこにクロツーの黒が乗ることで、
目元には「凛」とした、あるいは
「キリッ」と引き締まったまなざしが宿ると思う。
かつてビル・エヴァンスが愛したこの眼鏡をかけると、
僕の耳の奥には決まって軽快なウッドベースのリズムが流れ出す。
自由なピアノのメロディがダンスを始め、
まるで目の前の空間に、
楽譜が浮かび上がってくるような錯覚さえ覚える。
50年代ヴィンテージと近年の復刻版の両方を所有している。
今や当時の十倍もの値がつくヴィンテージだが、
手に入れたのはブームよりずっと前のこと。
普通の眼鏡より安くデッドストックが売られていた。
これをかけ、少しだけお洒落をして美術館へ向かう。
展示室を歩いていると、
自分が作品の一部に紛れ込んだような高揚感がある。
もちろん、ただの自己満足。
古いジャズのレコードに針を落とすように、
僕は今日もTimesをかける。
このフレーム越しに見る世界はいつだって、
少しだけスケールアウトしたアドリブを奏でてくれる。

いいなと思ったら応援しよう!
少しでもお役に立てる情報✨や、面白い読みもの❣を届けていきたい所存です。
もし応援いただけるなら、🐻クマ(私)のベリー代としてチップを弾んでいただけると嬉しいです😍
皆さんから頂いたパワーで、また森から良い記事をお届けします。