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中野駅周辺エリアプラットフォーム、始動|8年間の伏線が、やっと「組織」になる

2026年3月3日、夜の中野。

会議室に30人ほどが集まっていました。行政の人、地元企業の人、商店街の人、デベロッパー、大学関係者。横断幕には「中野駅周辺エリアプラットフォーム」と書かれている。決起会です。

4月1日、正式に設立されます。会員組織の任意団体として。

「任意団体」という響きに、ピンとこない人も多いかもしれません。法人格もない、予算規模も大きくない、そんな組織が都市を変えられるのか、と。

でも、僕はこの小さなスタートにこそ意味があると思っています。

中野駅の周辺を歩くと、いま、あちこちが仮囲いです。駅の西側には新しい南北自由通路と橋上駅舎の工事が進んでいる。アトレが入る駅ビル。南北の駅前広場。囲町のパークシティ中野はもうすぐ竣工。中野二丁目の再開発も終わっている。

2026年度から、駅舎や駅前広場の基盤整備が本格的に動き出します。目に見えて、中野の駅前が変わっていく。これからの数年で。

ハードが変わる。それはいい。

問題は、「ハードが変わった後」です。

新しい駅前広場ができる。公開空地が生まれる。デッキでつながる歩行者空間が整備される。きれいな空間が用意される。

で、それを誰が使うのか。誰が運営するのか。誰が「楽しい」にするのか。

日本の都市開発は、ここが弱い。つくるところまでは巨大なエネルギーが注がれるのに、つくった後のことは「あとは民間でよろしく」か「行政が管理します」のどちらかになる。前者は無責任で、後者は退屈です。

ハードをつくって終わり、という時代はとっくに終わっています。

行政だけにまちづくりを任せる時代でもない。

もうひとつ言わせてください。

いま日本で「ウォーカブルシティ」が盛んに語られています。国もウォーカブル推進都市を掲げ、全国の自治体が手を挙げている。それ自体は良いことです。でも、正直に言えば、行政だけでうまくいっているところは多くない。

なぜか。

ウォーカブルシティを「歩道を広げること」だと思っている人が、まだ多いからです。

車線を減らす。歩道を広げる。ベンチを置く。それはウォーカブルの一部でしかない。本当に「歩きたくなる街」をつくるには、パブリックスペースだけでは足りない。民間の不動産を動かさないといけない。1階のアイレベル——通りに面した店舗のファサード、開口部、にじみ出し。街路に沿ったヒューマンスケールの体験。これは行政がコントロールできる領域ではありません。

街の不動産。街の活動。街の情報発信。それぞれ担い手が違う。行政、デベロッパー、地権者、商店会、町会、企業、大学。この全員がスクラムを組まなければ、ウォーカブルシティなんてできない。

じゃあ、そのスクラムを誰が組むのか。

その「誰が」を組織化したのが、今回の中野駅周辺エリアプラットフォームです。

8年前、区役所の建て替えから始まった

僕と中野の関わりは、2018年にさかのぼります。

中野区役所・サンプラザ地区の再整備にあたって設置された区民会議。その委員として、中野のまちづくりに関わるようになりました。

当時の中野は、サンプラザの建て替えが議論の中心でした。でも、僕が気になっていたのは、建て替え後のソフトの部分——エリアマネジメントをどうするか、でした。建物は建て替えられても、まちの「使われ方」は自動的には変わらない。

2019年、中野駅周辺エリアマネジメント研究会が産学公金の連携で発足します。僕は実質アドバイザーとして参画しました。

2020年には、この研究会の活動を日本大学都市計画研究室(泉山ゼミ)のプロジェクトとして位置づけ、中野駅周辺のエリアマネジメントのあり方を、中野区、産業界、大学、金融機関と一緒に研究。2021年には研究成果として、「中野駅周辺エリアマネジメント」と「エリアプラットフォーム」の設立を提言しました。

2022年4月、提言を受けて中野駅周辺エリアマネジメント協議会が設立。ここからの4年間、アドバイザーとして、中野区、地域、民間企業の皆さんと議論を重ねてきました。

エリアビジョンの策定。アクションプランの作成。公開空地やパブリックスペースの活用ルールの骨子案。そして、エリアマネジメント組織とエリアプラットフォームのあり方の検討。

地道な議論です。華やかなイベントでもなく、メディアで取り上げられるような成果でもない。でも、都市が本当に変わるためには、この「組織と仕組みの設計」が不可欠です。

エリアプラットフォームとは何か

ここで、「エリアプラットフォーム」について少し説明しておきます。

2020年に国土交通省が「官民連携まちなか再生推進事業」を創設しました。ウォーカブルシティ政策の文脈で、全国の都市に対して、官民が一緒にまちなかの将来像を描き、実行する場——エリアプラットフォームの構築を支援する仕組みです。

これまでに全国で約160地域が支援を受け、エリアプラットフォームが立ち上がっています。東京では池袋がすでに動いています。

要件はシンプルです。エリアに関わる多様な人が集まること。まちづくりの専門人材がいること。エリアの将来像の実現を目的としていること。

つまり、特定の開発プロジェクトのための組織ではない。エリア全体の価値を、多様な主体が連携して高めていくためのプラットフォームです。

中野で言えば、これまでの協議会は区と各地区の代表者で構成されていました。エリアプラットフォームでは、そこに商店会、町会、企業、教育機関など、中野駅周辺のまちづくりに関心のあるあらゆるプレイヤーが会員として参加できます。

間口が、一気に広がる。

サンプラザは仕切り直し。でも、中野は止まらない。

中野サンプラザの建て替え事業は、現在仕切り直しの状況です。

ここだけを見ると、「中野の再開発は頓挫したのか」と思われるかもしれません。

しかし、実際には中野駅周辺の都市基盤整備は着実に進んでいます。中野駅の新駅舎、西側南北自由通路、南北の駅前広場、デッキ、周辺の再開発。これらは待ったなしで動いている。

サンプラザの件は大きなニュースになりましたが、中野駅周辺全体で見れば、都市が変わるための基盤は確実に整いつつある。

そして、基盤が整えば整うほど、「その先」を担う組織が必要になる。ハードができた後に、パブリックスペースを使いこなし、エリアの価値を維持・向上させていく主体が。

今回のエリアプラットフォームは、まさにそのための組織です。

中野駅南口駅前広場から Photo by 泉山塁威

これからのこと

中野駅周辺エリアプラットフォームでは、今後、法人化や都市再生推進法人の指定など、制度的な基盤づくりを進めていきます。持続可能なパブリックスペースや公開空地の活用の仕組み。広告事業や空間活用による収益モデルの構築。地域の皆さんと一緒に楽しく活動しながら、中野のエリア価値を上げていく取り組み。

「楽しく」と書きましたが、これは本気で言っています。エリアマネジメントは、苦行ではない。まちを使いこなすことは、本来楽しいことのはずです。ロジも回り、お金の流れもつくり、その上で地域の人が「これ、いいね」と思える活動を重ねていく。

僕は、顧問専門家として、引き続き中野駅周辺エリアプラットフォームに関わっていきます。事務局と一緒に考え、行動し、カタチにしていく。

小さくはじめ、大きく育てる。

2018年に区民会議の委員として中野に足を踏み入れてから、8年。研究会、協議会、そしてエリアプラットフォーム。ようやく、「組織」としてのスタートラインに立ちました。

走り出したら、止まりません。

泉山塁威(いずみやま・るい) 日本大学理工学部准教授/中野駅周辺エリアプラットフォーム 顧問専門家 専門:都市計画、エリアマネジメント、パブリックスペース

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泉山 塁威(Rui IZUMIYAMA)
日本大学理工学部建築学科 准教授/一般社団法人ソトノバ 共同代表理事/都市戦術家 専門は都市経営、エリアマネジメント、パブリックスペース。タクティカル・アーバニズムやプレイスメイキングの実践・研究に取り組む。 著書に『タクティカル・アーバニズム』『プレイスメイキングハンドブック』『パブリックスペース活用辞典』など。

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