最強のオタおば部屋を作っていたら、一ヶ月たっていた
※「最強」はあくまでも個人的な主観です。
新居にすべてのインフラが通り、物量の多さに眩暈を覚えながら荷物を運び終えたのが、一ヶ月前。
引っ越しの前日に、シムズ4をプレイしてPCの電源を落としたのが最後だった。
それ以来、気付けば今日に至るまで、全くPCには触れずに過ごしていたのだ。
このことに自分でも驚いた。
私は朝起きたら真っ先にPCの電源を入れ、”閉じたウィンドウを開く”ような人間だったからだ。
それがどうだろう。
今や朝起きたら真っ先に庭へ出て、ハンギングチェアに腰を下ろす。
風が樹葉を揺らす音や、鳥たちの歌声に耳を澄ませながら、一日の始まりを迎えていた。
……そう、すでに過去形なのである。
家が変わったくらいで悟りが開けたら釈迦はいらない
三階建ての広すぎる古い家から、半分ほどの大きさの新築へ引っ越した。
間取りも外観も、自分でデザインした理想の家だ。
その中でも特に拘ったのは、もちろん自室である。
ゲーミングPCが置けて、絵を描く机があって、弾こうと思った時にすぐピアノに触れられる。
リールチェアに座って床をひと蹴りするだけで、全てのスペースに手が届く。
そんな部屋にしたくてセンチ単位までこだわった。
最早ユニバーサルサイズと化しつつあるIKEA家具が、寸分違わず収まるように。
その部屋で早くゲームがしたい、ピアノが弾きたい。
そして何よりも創作がしたい。
その一心で、毎日ひたすら家を片付け続けた。
ところが、大小さまざまなトラブルに見舞われ、更には例を見ない程の熱波が欧州を襲った。
日本で生まれ育った私にとっても地獄の数日間で、少し作業に没頭しすぎると、一時間くらいソファでへばってしまうという有様だった。
スマホを弄るのさえ億劫になっていた。
だがその一方で、ぼうっと窓から樹々を眺めているだけで、信じられない程満たされていることに気が付いた。
まさか自家発電を通り越して、悟りの境地に達してしまったのだろうか。
そんな不安さえ過った程だった。
もちろんそんなことあるわけがない。
家が片付き始め、あの忌々しい熱波が去った後、私の煩悩はしっかり戻ってきた。
ご丁寧に手土産まで携えて。
おかげで、樹々を眺めながら、滾々と湧き出る妄想をスマホのメモ帳に打ち込むという、少しだけ意識高そうな習慣が出来た。
オタクの城は一日にして成らず
①

②

③

④

⑤

⑥

この部屋で特に重要視したのが壁面収納、IKEAのBoaxelだ。
IKEA家具の組み立てはそれなりに経験してきたが、こういったカスタムタイプのものは初めてだった。
少々不安だったが、思ったよりも簡単に取り付けられた。
水平器と電動ドリルさえあれば、ペットボトルの蓋が開けられないような、貧弱な中年女一人でも余裕だった。
とはいえ、下調べ不足と焦りで幾つか失敗もしてしまった。
今回はDIY記事ではないので詳細は省くが、全ての元凶は「長いレールを切れば済む」という発想が最後まで出なかったことである。
何故長いレールが売っているのか、全ての物事には必ず理由があるのだ。
それでも明らかに見た目に分かる程ではなく、機能的にも全く問題はないので概ね満足している。
ただいま、私のディストピア
そして私は今、我が愛しのゲーミングPCとの再会を果たした。
青いバラのチャームを瞬間接着剤で張り付けた、いかにも不穏なUSBを突き立てObsidianを起動する。
現れたのは書きかけの創作小説……ではなく「ウザ受け考察」と題された、およそ一万字にも及ぶ怪文書だった。
だがむしろ、そのおかげで肩の力が抜けて良かったのかもしれない。
たった一ヶ月、されど一ヶ月。
創作から離れていた間に、技量も何もかも、すっかり巻き戻ってしまったような気がしていたからだ。
続きを書けるのだろうか。
もしくは、全部書き直したくなったりしないだろうか。
そんな不安が胸の奥で蠢いていた。
それが「ウザ受け考察」という、予想外の対面ですっかり吹っ飛んでいった。
小説を読み返したら、自分でも驚く程”それなり”に書けていた。
もちろんあくまで私基準での話なのだが、それでも、自分の書いた作品に感情を揺さぶられたことに安堵した。
続きを書き始めたら、思ったよりもすらすらと筆が進んだ。
それどころか、以前は5時間くらいPCに向かって書いていたような内容を、2時間程度で書き上げてしまった。
お世辞にもすっきりしているとは言えない私の「腐城」。
それでもここは私の理想郷なのだ。
自分の世界を楽しむために構築した小さな一間には、私が見たいもの、欲しいものが全て詰め込まれている。
悟りは開けなかったが、自分の好きなものだけに囲まれて暮らすという煩悩なら、ようやく極められそうな気がしている。
