第4話 「初めて車で一緒にゴルフへ行った日」
Eさんのもよりの駅の近くで待ち合わせをした。
約束の時間より少し早く着いた私は、車を停めて待っていた。
しばらくすると、ゴルフバッグを持ったEさんが見えた。
その姿を見た時、なぜか少し緊張した。
ゴルフ場で会うのとは少し違う。
車で迎えに来るというのは、なんとなく距離が近く感じるものだ。
Eさんは私に気付くと笑顔で近づいてきた。
そして、
「ごめんね〜」
と少し申し訳なさそうに言いながら助手席へ乗り込んだ
でも、その時の笑顔は覚えている。
さすがにこれで三度目だった。
LINEでもやり取りをしていたので、最初に会った時のような緊張感はなかった。
車が走り出すと自然と会話も始まった。
その日も楽しくラウンドを終えた。
そして行きの車の中で話していた通り、帰りに近くのスーパー銭湯へ寄ることにした。
観光客が来るような場所ではない。
地元の人しか来なそうな昔ながらのスーパー銭湯だった。
それぞれお風呂に入り、休憩所で待ち合わせをした。
しばらくするとEさんが笑顔でやって来た。
そして開口一番、
「聞いてよ!」
と言う。
どうやらお風呂で地元のおばちゃんたちに話しかけられたらしい。
しかも結構な勢いだったようで、
「何言ってるか分からないくらい訛ってた!」
と大笑いしていた。
その話を聞いて私も笑ってしまった。
本当に楽しそうだった。
ゴルフだけじゃなく、その場その場を楽しめる人なんだなと思った。
そして帰り道。
車を走らせながら自然と次の話になった。
「次はいつ行く?」
気が付けば、それが当たり前になり始めていた。
ゴルフが終われば次の予定を決める。
まだその時は特別なことだとは思っていなかった。
ただ、一緒にいて楽しいゴルフ仲間だった。
帰りの車の中で、
「次はいつ行く?」
という話になった。
もちろん行くことは決まった。
問題はどこへ行くかだ。
それからはLINEでやり取りをしながら予定を決めるようになった。
私はそういうのが嫌いじゃない。
どこのゴルフ場にするか。
何時に出るか。
帰りはどうするか。
そんなことを考えている時間も楽しかった。
そして次に決まったのは秩父方面のゴルフ場だった。
今回はゴルフだけではない。
ラウンドが終わったら日帰り温泉へ行く。
そのあとご飯を食べて帰る。
そんなプランだった。
今思えば、ゴルフだけが目的ではなくなり始めていたのかもしれない。
もちろんその時はそんなことは考えていなかった。
ただ純粋に、
「楽しそうだな」
と思っていた。
Eさんも楽しみにしているようだったし、私も楽しみだった。
そして当日を迎えることになる。
もう4回目になると、朝の待ち合わせもずいぶん自然になっていた。
最寄りの駅で待ち合わせをして、
「おはよう!」
そんな感じで車に乗り込む。
そして世間話をしながらゴルフ場へ向かう。
最初の頃の緊張感はもうなかった。
その日もいつも通り楽しくゴルフをした。
そしてラウンド後。
事前に調べておいた日帰り温泉へ向かった。
露天風呂もあり、なかなか良いところだった。
ゴルフの後の温泉はやっぱり気持ちがいい。
そして今回は秩父まで来ていたので、せっかくだからご飯も食べて帰ることにした。
調べてみると秩父はホルモン焼きが有名らしい。
私もその時初めて知った。
そこで駅前のホルモン屋へ向かった。
駅前とは言っても都会の駅前とは違う。
秩父らしいのんびりした雰囲気だった。
席について、
「何飲む?」
と聞くと、
Eさんは迷わず、
「とりあえずビール!」
と言った。
私は少し驚いた。
私は見た目だけならかなり酒を飲みそうに見えるらしい。
でも実際は全く飲めない。
体質的に合わないのだ。
だから私の注文はいつも烏龍茶。
ところが案の定、店員さんは勘違いした。
私の前にビール。
Eさんの前に烏龍茶。
「いやいや逆です(笑)」
そんなやり取りをしてみんなで笑った。
今となってはよくある話だ。こうしてゴルフをして、温泉に入って、ご飯を食べる。
特別なことをしているわけではない。
でも不思議と楽しかった。
ゴルフをして、温泉に入って、ご飯も食べた。
Eさんはビールも飲んでいた。
疲れもあったのだろう。
助手席で何度も眠そうにしていた。
コクリ、コクリと船をこいでいる。
「寝ていいよ」
そう言っても、
「大丈夫」
と言いながら頑張って起きている。
私は思わず、
「眠いなら寝なよ」
と軽く肩をたたいた。
するとEさんはようやく目を閉じた。
しばらく車を走らせていると、
ふと腕に温もりを感じた。
気付くと、肘掛けに置いていた私の手の上に、Eさんの手がそっと重なっていた。
眠っていたから偶然だったのかもしれない。
でも、その時の私は少し驚いた。
暗い山道だったこともあり、車の中は静かだった。
私はそのまま運転を続けた。
普段のEさんは元気いっぱいだ。
いつも明るくて、よく笑う。
でもその時は静かに眠っていた。
安心したような顔だった。
その顔を見ながら、
「ああ、可愛い人だな」
と思ったのを覚えている。
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