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CIAの男

僕が独立開業した店は、横並びに五軒ほど商店があり、二件隣りは居酒屋だった。
お付き合いもあり、時々、顔を出したのだが、
そこでたまに見かけるおじいさんがいて、
そのじいさんは、チューリップハットをかぶり、分厚いレンズのメガネをかけていて、カウンターの隅で焼酎の湯割りと冷やっこ等を飲み食いしている。
焼酎を2~3杯呑むと、なにも言わず、手を上げて、「帰る」合図をして店を出る。
店のママさんは、「ありがとねー」とそちらの方は見ずに、どちらかというと、他の客に対する態度より冷たい気がする。
お金を払わないので、「ツケ」で呑んでるようだ。
その
じいさんが帰ったあと、他の客が、
「CIAも歳とったなあ」
と言った。
「CIA?!」
あのじいさんがCIA。まさか、あんな純和風な
おじいさんが、アメリカ中央情報局のメンバーなはずがない。アメリカのCIAは、冷やっこなどをつまみに下町のナポレオンいいちこの湯割りを呑むものか。
僕は、その客に訊いてみた。
「あの人、何でCIAっていうんですか?」
すると、その客は、
「今度、あのじいさんみかけたら、話しかけてみ?」
と、なにやら意味深な言葉を残し、ビールをグビグビ飲み干した。
さて、それからしばらくして、
ぼくの店の隣のコインランドリーの椅子に座って缶チューハイを呑んでいるCIAじいさんを発見。
思いきって、話しかけてみた。
「先日、そこの居酒屋さんでご一緒でしたね」
と、話しかけると、
わかったのかわからないのか、うんうんとうなずいている。
今日ものみにいくのか、という問いには、いかないと応えた。
うーん、あの常連客の言ったとおり話しかけてみたけど、このじいさんが「CIA」と呼ばれる所以をなにも引き出せない。
すると、じいさんは、ぼくの方を見て、
「昨日の晩も、出たよ・・・。ありゃあ、何時ごろだったかなぁ」
というので、
「え?!えっと・・・何が・・ですか?」
と問うと、
「円盤」
「・・・!円盤!」
驚いた僕はかなりの大きさの声で「円盤!」と、叫んでしまった。乳母車を押してる耳の遠そうな通りすがりのおばあさんまで、ビックリしていた。
僕は、そのじいさんに、
「円盤って、あの円盤ですか?U.F.O.の、円盤?」
というと、
「昨日は5機、出たよ」
「どこに?!」
「国会議事堂の上空5000メートルのところ」
じいさんが言うには、
昨晩、国会議事堂の上空に5機のU.F.O.が飛来した、とのことだった。
「飛んでくるときは、わかるの、家にレシーバーがあるから」
というので
「レシーバーってなんですか?」
と、聞くと、
「宇宙の石があるからね、それをインプットさせて、レシーバー作ればいいの、いいの。」
と、わかるようなわからないような答え。
「あ、そうだ。」
といい、ポケットからなにやら取り出し、
僕にくれるというそれは
なんと「月の石」。
万国博覧会でも、長時間並んだ挙げ句、ほんの数秒、見るのがやっとの月の石。
昼間からコインランドリーの椅子に座り、缶チューハイ呑んでるじいさんがポケットから取り出し、僕にくれるのだそうだ。
じいさんは、こう続けた。
「この石をインプットさせてねぇ、レシーバーこさえたら、U.F.O.なんて、すぐに来るよ」
と、教えてくれたが、
そのレシーバーとやらがなにかわからないし、当然、インプットさせる方法もわからない。
でも、よくわからないなりに、おもしろそうなので、
「他に宇宙人というか、U.F.O.というか、なにか、知ってらっしゃることありますか?」
と尋ねると、
「金星人の動きが気になるねぇ、なにもなきゃいいけど」
と、いうので、
「火星人とかは、大丈夫そうですか?」
と続けると
「あんた!そりゃあねぇ、火星人なんて、ほんとにいると思ってるの!?ありゃあねぇ、子供の作り話よ!」
と、
「火星人はいないけど金星人は存在するということは常識だ」
という勢いで云われた。
その後、僕の店にお客さんが来たので、
そこでそのおじいさんとの会話は終了した。
「なるほど・・・CIAか・・・」
その後も、度々、そのじいさんを見かけたので、
色々お話をした。
動きが気になるという金星人が、
じいさん曰く、
「富士山の内側の土地を買った」
らしい。
金星人は誰から富士山の内側を買ったのかはわからないが、やはり、金星人の動きは、今後も気にしておいた方が良さそうだ。


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