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#178 新紙幣発行!明治から受け継ぐ偽造防止の技術

『紙について楽しく学ぶラジオ/Rethink Paper Project』
このラジオは、「紙の歴史やニュースなどを楽しく学んで、これからの紙の価値を考えていこう」という番組です。
この番組は、清水紙工(株)の清水聡がお送りします。
よろしくお願いします。

新紙幣発行!

さて、今回は7/3にリニューアルされたアレについて話していきたいと思います。

そう、新紙幣ですね。
皆さんはもうお手に取られましたでしょうか?
僕は、残念ながら、まだ入手出来ていません。

F一万円券(出典|国立印刷局HP)
F五千円券(出典|国立印刷局HP)
F千円券(出典|国立印刷局HP)

さて、日本の紙幣は技術が高いと言われていますが、今回の紙幣にもいろんな技術が使われています。

という訳で、今回は、新紙幣に採用された技術たちについて解説していきたいと思います。

偽造防止技術の高い日本銀行券

日本の紙幣は偽造防止技術が高いと言いますが、実際、どれくらい高いものなのか、気になりますよね。

日本の偽造防止技術の高さを物語るデータがあるんです。
100万枚当たりにどれくらいの偽造紙幣が流通したか、という調査がされています。

まず、「ポンド」
100万枚当たりの偽造紙幣の数、2,400枚
続いて、「ユーロ」
100万枚当たりの偽造紙幣の数、1,200枚
そして、「円」
100万枚当たりの偽造紙幣の数、驚異の13枚

(2021年調べ)

ダントツです。

日本で偽造紙幣を流通させるのは、めちゃくちゃ難しいということが分かっていただけたかと思います。

偽造防止のカギを握る工芸官

さて、そんな偽造防止技術が高い日本の紙幣ですが、その理由に迫っていきたいと思います。

当然、製造技術の高さもありますが、今回は、開発フェーズにフォーカスを当てていきたいと思います。

日本銀行券の開発・製造を請け負っているのは、「独立行政法人国立印刷局」という所です。

この国立印刷局の中に、「銀行券部」、つまり、日本銀行券を担当している部署があります。
さらにその銀行券部の中に、「製品設計グループ」という組織があります。
そう、この製品設計グループこそが、日本紙幣の偽造防止技術の中枢と言っていい組織です。

製品設計グループは、簡単に言うと、日本銀行券のデザインや原版の制作を行っている組織です。
そこに所属する「工芸官」という方々。
この方々こそが、偽造防止を目的としたデザインや彫刻を行う専門職員なんです。

まず、製品設計グループは、4つの部門に分かれます。

①製品デザイン部門

製品デザイン部門は、お札の全体のデザインをする部門です。原図と呼ばれる、お札のデザインのもととなるものを作っています。

原図制作の様子(出典|国立印刷局HP)

②彫刻部門

彫刻部門は、肖像画や建物の制作をする部門です。今回で言うと、渋沢栄一さんの肖像画なんかを、金属板に彫刻刀で彫刻していく、そんな作業をされています。

彫刻作業の様子(出典|国立印刷局HP)

③線画デザイン部門

線画デザイン部門は、独自の幾何学模様を制作する部門です。お札には独特な幾何学模様があると思いますが、アレを最新のソフトを使って製作されています。

線画制作の様子(出典|国立印刷局HP)

④すき入れ部門

すき入れ部門は、紙幣全体の透かし模様を制作する部門です。お札を光で透かすと浮かび上がるアレです。この番組をご視聴の皆さんならご存知の、和紙をルーツにした、透かしの技術ですね。

すき入れ(出典|国立印刷局HP)

これら4つの部門で、それぞれの工芸官の方々が、偽造防止を目的とした作業をされている訳です。

工芸官のスゴイ技術

じゃあ、この工芸官の方たちのスゴイ技術について見ていきましょう。

①原図

製品デザイン部門が制作する日本銀行券のデザインである「原図」は、水彩絵具と鉛筆手書きで描かれていきます。もう、最終形の日本銀行券とほぼ同じと言ってもいい精度で描かれます。

②肖像画

今回10000円札に採用された渋沢栄一さんを例に挙げましょう。お札に採用された肖像画は、実はそのまま写真を写している訳ではないんです。複数の写真をもとに彫刻部門の工芸官が、お札にふさわしいかたちで描きなおしているんです。他の国では、機械で彫刻していますが、日本では今でも手彫りをしています。
これは、明治時代に来日したお雇い外国人のキヨッソーネという方が遺してくれた技術です。キヨッソーネはメゾチント、エッチング、ビュランと言った彫刻の技術をめちゃくちゃうまく使いこなす天才彫刻家です。明治天皇、西郷隆盛の肖像画、パッと思い浮かぶと思いますが、アレを描いたのも何を隠そうキヨッソーネです。
キヨッソーネが遺してくれた手彫りの技術を使うことで、諧調表現が豊かになる、つまり、偽造防止に繋がるわけです。

エドアルド・キヨッソーネ

③すき入れ

紙の厚みを変えることで明暗を表現する技術です。お札の厚みは0.1mmです。この厚みの中で厚薄を付けているんです。すごすぎですよね。
以前の回でも紹介しましたが、紙の厚みを薄くすることを「白透かし」、厚くすることを「黒透かし」と言いますが、お札では、これらをミックスした「白黒透かし」で表現しています。
明治に入って、日本で最初の全国共通紙幣を作るときに、越前和紙の職人が東京・王子の国立印刷局に呼ばれて技術開発を行いました。最初は手漉きで作られていましたが、今は、その技術が機械抄きに応用されています。

明治から受け継ぐ偽造防止の技術

さて、このように、彫刻は明治時代のお雇い外国人・キヨッソーネから受け継ぎ、すき入れは明治時代の越前和紙の職人から受け継いで今に至ります。

すき入れは、当時より技術がグンと上がっています。
渋沢栄一さんの背景を見てみてください。
めちゃくちゃ細かいひし形の模様が入っています。

他の国より圧倒的に偽札の流通が少ない日本円。
その背景には、明治から伝わる偽造防止の技術を受け継ぐ工芸官の方々の技があったんですね。

はい、という訳で、日本の紙幣に隠された偽造防止技術の数々について解説してきました。いかがだったでしょうか。
それでは、本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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