【子育て心理学】2学期が近づくと「頭が痛い・お腹が痛い」が増える理由

――夏休み後半に現れる子どもの身体からのSOS――

夏休み後半になると、

「朝になるとお腹が痛いと言うようになった」

「頭痛や吐き気が増えている」

「夜は元気なのに、朝になると起きられない」

といった変化が現れる子どもがいます。

親御さんからすると、

「まだ学校は始まっていないのに、どうして?」

と感じるかもしれません。

しかも、ゲームをしているときは楽しそうだったり、友達とは遊べたりすると、

「本当に具合が悪いの?」

「学校へ行きたくないだけでは?」

と疑いたくなることもあるでしょう。

しかし、子どもの心の負担は、必ずしも「不安」「つらい」という言葉で現れるわけではありません。

頭痛、腹痛、吐き気、食欲低下、倦怠感、朝起きられないなど、身体の症状としてSOSが現れることがあります。

心理学的背景①

不安は身体にも現れる

人は強い不安や緊張を感じると、自律神経などを介して身体にも変化が起こります。

心拍が速くなる。

呼吸が浅くなる。

筋肉が緊張する。

胃腸の働きが変化する。

眠りが浅くなる。

大人でも、試験や大切な仕事の前にお腹が痛くなることがあります。

子どもも同じです。

「また友達とうまくやれるかな」

「先生に注意されないかな」

「勉強についていけるかな」

こうした不安をうまく言葉にできないとき、身体が先に反応することがあります。

つまり、心理的な要因が関係していても、痛みや吐き気そのものは本人にとって本物です。

なぜ夏休み後半に増えるのか

夏休み前半は、学校から離れた安心感によって元気になる子どもがいます。

朝早く起きなくていい。

苦手な友達に会わなくていい。

授業や集団生活に合わせなくていい。

学校で張りつめていた心と体が休めるからです。

ところが夏休み後半になると、

宿題。

始業式。

制服。

学校からのお知らせ。

「そろそろ生活を戻そうか」という親の声。

こうしたものをきっかけに、子どもの中で2学期が現実味を帯びてきます。

学校はまだ始まっていなくても、心と体はすでに緊張し始めているのです。

「仮病」と決めつけない

朝は腹痛を訴えていたのに、昼になるとゲームをしている。

学校の話では具合が悪くなるのに、友達とは遊べる。

そんな姿を見ると、親としては疑いたくなります。

しかし、不安に関連する身体症状は、状況によって強さが変化します。

「今日は学校へ行かなくていい」と分かると緊張が下がり、症状が軽くなることもあります。

そのため、

「ゲームができるから、朝の腹痛は嘘」

とは限りません。

大切なのは、本当か嘘かを見抜くことより、

いつ、どんな場面で症状が強くなるのかを見ることです。

朝起きられないときも一つの原因に決めない

夏休み後半によく聞くのが、

「朝起きられない」

という相談です。

背景には、

生活リズムの乱れ。

ゲームやスマホ。

予期不安。

抑うつ。

発達特性。

睡眠の問題。

起立性調節障害など、

さまざまな可能性があります。

特に、めまい、頭痛、動悸、強い倦怠感があり、午前中は調子が悪く午後に元気になる状態が続く場合には、本人の努力不足だけで考えないことが大切です。

心か体かの二択ではなく、両方から見る必要があります。

ある家庭で起きていたこと

中学生の子どもが、夏休み後半から頻繁に腹痛を訴えるようになりました。

夜は眠りにくく、食事も少し減っています。

ところが昼間はゲームをして笑っています。

お母さんは最初、

「生活リズムが崩れたからだ」

と考えていました。

しかし、学校の話をしたときだけ表情が急に硬くなることに気づきました。

ゆっくり話を聞いてみると、

「学校に行きたくないわけじゃない。でも、また友達とうまくいかなかったら嫌だ」

という言葉が出てきました。

1学期の後半から友人関係で強い負担を感じていたのです。

表面に見えていたのは腹痛でしたが、その奥には2学期への不安がありました。

心理学的背景②

心と体を分けすぎない

子どもの身体症状を見るときは、

「心の問題か、身体の病気か」

と二つに分けすぎないことが大切です。

身体の不調によって不安が強くなることもあれば、学校や人間関係へのストレスが身体症状に影響することもあります。

だからこそ、

睡眠。

食事。

学校生活。

友人関係。

家庭での様子。

発達特性。

本人の不安。

これらを合わせて見ていく必要があります。

心理師への相談では、こうした背景を整理しながら、

「何が一番負担なのか」

「家庭ではどう関わればよいのか」

「学校とはどのように調整するか」

を一緒に考えることができます。

問題が深刻になってからではなく、「少し気になる」段階で相談することも早期支援です。

親ができる関わり方・3ステップ

1.まず「つらさ」を受け止める

「またお腹が痛いの?」

ではなく、

「今日はしんどいんだね」

と本人の苦しさを受け止めます。

2.症状のパターンを見る

朝だけか。

学校の話をした後か。

眠れているか。

食事は取れているか。

休日はどうか。

簡単に記録しておくと、心理師や医療、学校へ相談するときにも役立ちます。

3.登校より先に負担を整理する

「明日は行ける?」

を繰り返すより、

「何が一番しんどそうなのか」

を一緒に整理します。

本人にも分からないときは、心理師など専門家と一緒に考えることもできます。

家庭でできるチェックリスト

□ 頭痛や腹痛が増えた
□ 吐き気や食欲低下がある
□ 朝起きられなくなった
□ めまいや倦怠感がある
□ 寝つきが悪くなった
□ 学校の話題で体調が変化する
□ イライラや無気力が増えた
□ 夏休み前半より表情が暗い
□ 「学校が始まるのが嫌」と話す
□ 午後や好きな活動では比較的元気になる

数だけで判断するのではなく、以前との変化、症状の強さ、続いている期間、生活への影響を見ることが大切です。

どの段階で専門家へ相談する?

「病院へ行くほどではない気がする。でも、このままでいいのか分からない」

そんな段階でも相談して構いません。

学校の話になると体調が悪くなる。

朝の腹痛が繰り返される。

2学期への不安が強い。

親がどう声をかければよいか分からない。

そんなときは、公認心理師など心理の専門家と、心身や学校生活の負担を整理することも一つの方法です。

一方で、強い痛みが続く、食事や水分が取れない、繰り返し嘔吐する、急激な体重減少があるなど、身体面の異変が強い場合には医療機関での確認が必要です。

また、自傷行為や「消えたい」「死にたい」といった発言がある場合には、家庭だけで抱えず、心理・医療を含む専門機関へ早めにつなぐ必要があります。

大切なのは、

「医療か心理か」ではなく、その子に今必要な支援は何かを考えることです。

子どもの身体は、心より先にSOSを伝えることがある

子どもは、

「怖い」

「不安」

「もう頑張れない」

と言葉にする前に、

「頭が痛い」

「お腹が痛い」

「朝起きられない」

と身体で訴えることがあります。

だからこそ、身体症状だけを直そうとするのではなく、

その奥に何があるのかを見てください。

夏休み後半に現れた身体の変化は、

「今の自分には少し負担が大きいよ」

というSOSなのかもしれません。

そのサインに早く気づくことができれば、不登校になってからではなく、その前から支えることができます。

2学期に向けて最優先したいのは、無理に学校へ戻すことではありません。

まず、子どもが自分の心と体の苦しさを安心して伝えられること。

そこから次の一歩を一緒に考えていくことが、早期支援につながっていきます。


著者プロフィール

小井出博文

青少年育成支援 なごや心理相談室
公認心理師・臨床発達心理士

不登校・行き渋り、思春期、発達特性(ASD・ADHD・LD)、ゲーム・スマホの問題、不安・抑うつ、心身症、親子関係など、子どもと保護者への心理支援を行っています。

子どもの行動や身体症状だけを見るのではなく、その背景にある心身の状態、学校生活、友人関係、家庭環境まで含めて丁寧に見立てることを大切にしています。

対面・電話・Zoomによるご相談に対応しています。

青少年育成支援 なごや心理相談室
https://nagoya-sinri.com/


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