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konohana_chi
ときめきトゥーシューズ〜夢と現実〜【毎週SS】
カラン、カラン——ハイボールの氷が弾けた。
「なあ、知ってるか?」
若い男が言った。
「昔の人、コルセットで肋骨まで締めてたらしいぞ」
「えー、何その拷問ファッション」
髪の長い美女が、ストローをくるくる回す。
「倒れそうじゃん」
「倒れないんだよ。むしろ“倒れそうに見えるのがいい”って時代さ」
「バレリーナも似たようなもんね。トゥーシューズでつま先立ち」
「痛みの中に美があるってか」
グラスをカチン。
「ときめきトゥーシューズ、ね」
カウンターの奥で、マスターが口を挟む。
「今は“未来版トゥーシューズ”だよ」
「何それ?」
「VRゴーグルで理想の世界に立つだけ」
ふたりは笑った。
「最高じゃない。確かに時代は進化したものね」
「ま、俺ら、現実じゃもう歩けないしな」
ゆっくりとゴーグルを外す。
――そこにいたのは、車椅子の老女と、杖をつく老紳士。
「でも、心は二十歳のトゥーシューズよ」
――全ては、バーチャル居酒屋の夜。
ときめきだけは、まだ現役だった。
