できることと残っているものを数える
朝の母との電話。
「どう、今日の調子は?」
私が尋ねる。
「あのね・・・。」
ちょっとした間が空く。
こういう日は、間違いなく母に何かあった日だ。
「どうした?」
「足が痛くてね、夜眠れなかったよ。それでサロンパスを貼りまくってね。おかげで、今朝はちょっとマシになった。」
「別に、どこかでこけたとか、うったとか、何もしてなくても、歳をとるとあちこちが痛くなるんや。」
「家の中は、杖をついて歩けるから、大丈夫やよ。」
そう言いながら、母は続けてこうも言った。
「この歳になったら、できんことを数えてもしょうがない。まだできることを数えるようにしてるんや。」
60代半ばを過ぎた私も、それには同感だ。
私も、腰は痛いし、物忘れもひどいし、すぐ疲れるし、できないことが増えてきたし、悩みだしたら、永遠に悩み続けなくてはいけない状況だ。
そればかり気にしてたら、生きていけなくなる。
そして母は、電話の最後にこの言葉も口にした。
「ここまで長生きさせてくれた両親に感謝やよ。」
それは、私も同じ気持ちでいる。
今は私も、親には感謝することばかりだ。
生まれてからの人生を振り返っても、現在、毎日を普通に過ごせていることを考えても、両親には感謝しかない。
電話を切るとき、
「この親の子供に生まれて本当に良かった。そう思うわ。」
母はそう言った。
以前に比べれば、少し不自由さは増えてきたが、それでもまだまだ母は一人暮らしができている。
両親(私の祖父母)に感謝しながら、毎日を心穏やかに過ごしている。
母の生き方・考え方を見ていると、しょうもないことでくよくよしたり、腹を立てたりする私は、何て小さな人間なんだろうと思う。
歳を取れば
できないことが増えていく。
失うものも増えていく。
それは、どうしようもないことだ。
無くしたものを追いかけるのではなく、
できていること、残っているものに目を向け直す。
その方がより前向きに生きられるのではないか。
そして、周りの人に感謝することも忘れない。
朗らかに生きる秘訣を、私は96歳の老母から今も学んでいる。
